ライオン、スニーカー、コーラの瓶……ユニークな棺で死者を送るガーナの葬式

Regula Tschumi / Wikimedia Commons

 ガーナに非常にユニークなビジネスがある。15歳のときから職人として修行を重ね、世界的にも有名な棺作りの芸術家として知られるジョセフ・アション氏。そのユニークな棺は著名人までもが購入するほどの人気がある。

◆死へのイメージを覆す
 現地ではPaa Joe(パー・ジョー)というニックネームで知られているアション氏。氏が作る棺は、ライオンからコーラの瓶、ロケットに魚とバラエティーにあふれ、使う素材も様々だ。約50年にわたって製作された棺が世界メディアに取り上げられ、緻密なデザインとアイデアのユニークさが話題になる。そしてパリのポンピドーセンター、ロンドンの大英博物館、ニューヨークのブルックリン美術館などに展示されるまでになっている。現在、パー・ジョーの棺製作工房以外にも約6つの小さな棺製作会社がガーナに存在する。

                                                                                                                 

 棺の一般的なイメージは「笑い」には程遠い。棺を見ると愛する人との別れを思い浮かべ悲しくそして湿っぽい気分、そしてなんだか薄ら寒い気分になることもある。棺桶を見て楽しい気分になる人はいないだろう。だが、パー・ジョーの棺は既存の死のイメージを覆す。本人曰く、死後には未来の世界があると信じているという。

 事実ガーナの伝統的な葬儀は週末に行われ、故人の一生の祝い事としてパーティーかのように執り行われる。歌ありダンスあり、悲しくも明るい雰囲気のなかで故人を偲ぶのが習慣である。そのため、故人の死後の世界を想像するためのユニークな棺が地元でも人気だ。アション氏の作る棺はおよそ5,000ドルから1,5000ドルで海外から発注を受ける。しかし、ガーナ国内での販売価格は1,000ドル程に値下げされる(CNN)。

 CNNの記者の「自分が死んだらどのような棺を作ってくれるのか」という質問に対し、パー・ジョー氏はカメラ型の棺を作ると答えている。ジャーナリストとカメラは一体化していることから生前の活動を後世に語り継ぐためにカメラ型にするだろうと付け加えている。

 パー・ジョー氏の作る棺は地元民から支持を受ける一方、政治家や宗教信者は不謹慎であると不快感を示す層も存在する。

◆世界の著名人も購入
 世界の著名博物館や美術館で展示されるまでになったガーナ特産のパー・ジョー氏の棺。過去にはガーナ出身でノーベル平和賞を受賞した元国連事務総長で最近亡くなったコフィ・アナン氏もパー・ジョー氏の棺工房を訪れている。CNNによると元アメリカ大統領のビル・クリントン氏やジミー・カーター氏も棺工房を訪れ、カーター氏は2つの棺を購入したと言われている。

◆長寿化によりビジネスが縮小
 世界でも絶えることのないビジネスの一つに葬儀ビジネスが挙げられる。しかし近年の医療進歩や生活スタイルの変化から世界的に寿命が延びている。この長寿化がパー・ジョー氏のビジネスに影響を与えている。以前は一月に8個ほどの注文があったが、徐々に減少し、ビジネス存続の危機に見舞われている。ガーナの死亡率は2015年に1000人当たり9人だったが、2017年には7人に減っている(CNN)。

 死は永遠の別れであり、悲しみは言葉では言い表せない。しかし、もしも自分の特性棺を見て笑顔を浮かべる弔問者がいたら、故人への親しみがさらに胸に広がり、素晴らしい葬儀になるだろう。まさに、パー・ジョー氏のいう死後の世界を想像することができるのではなかろうか。

Text by 安藤麻矢

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