フッ素なしの歯磨き粉、虫歯予防効果ないと専門家
口腔ケア企業もそのような主張に陥っている。リヴァイティンのフッ素無配合歯磨き粉のウェブサイトは、「虫歯に負けない歯を作る」と謳っている。
リヴァイティンの創設者で現在CSO(最高科学責任者)を務める歯科医師のジェラルド・カラトーラ氏は、今回の研究結果は「誤解を招く」もので、口腔細菌が健全に混在する状態こそ歯科衛生の要であることを最新の科学が示していると話す。「フッ素に虫歯予防効果があるとはまったく思いません」
しかし、同社の虫歯予防の主張について、「早急にウェブサイトからその文言を削除することになるでしょう。ウェブサイトに載せるべき文言ではないし、載っていることも知りませんでした」と付け加えた。
フッ素配合歯磨きとフッ素無配合歯磨きを販売しているシェフィールド・ファーマシューティカルズのCEOジェフ・デイヴィス氏は、フッ素に虫歯を減らす効果があることは「かなりはっきりしている」と話す。しかし、フッ素の大量摂取による悪影響を懸念する人々が少なからずおり、フッ素無配合の歯磨き粉を選ぶのだと説明する。
歯科医師によると、フッ素を用いなくても、歯磨きには一定の効果がある。今回の研究論文の主執筆者である歯科医師でワシントン大学教授のフィリップ・フジョー氏は、フッ素を用いない口腔衛生による実際の虫歯予防効果は小さすぎたため研究で検出されなかった、あるいは、研究対象となった子どもたちには見られなかった効果が大人には見られた可能性があると話す。
そして、同氏の研究では、歯磨きで歯肉の腫脹が減少した。また歯磨きは、歯に詰まった食物を除去し、口腔外科手術後の患者の回復を助ける。
米国歯科医師会(American Dental Association: ADA)のスポークスマンを務める歯科医師のマシュー・メッシーナ氏によると、電動歯ブラシは、高齢者に多く見られる、歯茎に隠れている歯根にできる虫歯の予防に役立つ。これは今回の研究の範囲外だった。
「私たちの長年の論争を立証するこの研究は重要です」と同氏は付け加える。ADAはフッ素配合歯磨き粉の使用を推奨している。
今回の研究は、フッ素配合歯磨き粉と同様にフッ素配合デンタル・リンスにも虫歯予防効果があると判明した、60,000人を対象にした研究の2009年の分析も引用している。
2016年、デンタル・フロスの効果について科学的根拠に乏しいとAP通信が報じた。その結果、連邦政府は長年推奨してきたデンタル・フロスを米国人のための食生活指針(Dietary Guidelines for Americans)から削除した。
今回の研究は、どのように虫歯ができるのかという問題を提起している。清掃が不十分な口内に残った食物から出た酸が歯のエナメル質を溶かすため虫歯は生じると長年考えられていた。つまり、歯を磨けば虫歯にはならないということだ。しかし、今回の研究は、歯ブラシやデンタル・フロスだけでは簡単に届かないエナメル質の小さな隙間で成長した虫歯という新たなモデルを論じている。
フッ素の効果は確実だが、フッ素配合歯磨き粉やデンタル・リンスと同様の虫歯予防効果がフッ化物を添加した水道水にあるとする考えを批判する研究もある。いずれにせよ、保護を増強するためにフッ化物を添加した水とデンタル・ケア製品を組み合わせることは理に適っていると、ニューヨーク大学教授で歯科医師のニーダーマン氏は話す。
最も効果的な虫歯予防法は、単純に食事中の糖分を減らすことだとする歯科医師の主張もある。
By JEFF DONN, AP National Writer
Translated by Naoko Nozawa