「川が死んでいく」革なめし工場による環境汚染が再び深刻化 バングラデシュ

AP Photo / A.M. Ahad

 秘密裏に調査を実施した捜査員は、特定の革素材が使われて個別の財布や靴となることを監視しきれなかった。素材の供給源の獲得から始まって小売店の陳列棚に製品が並ぶまでのサプライチェーンは数段階、時に十数段階にも及ぶ。

 トランスペアレンテムはバイヤーに対しても、シャバールにより優れた廃棄物処理施設を建設できるように力を合わせて支持するように呼び掛けた。

 こういった呼び掛けに反応を示したすべての企業は、口をそろえてバングラデシュにある製革工場からはもはや一切の皮革を調達していない、と主張した。中には、バングラデシュから皮革を購入したことは一度もない、と回答する企業もいた。メイシーズ、ティンバーランドおよびクラークスは製品をバングラデシュで製造し続けている。

 クラークスは「当社は、バングラデシュにあるどの革なめし工場とも、直接的にも間接的にも一切の関係はない」と声明の中で述べた。この声明によると、同社のバングラデシュにある生産業者は、すべての皮革を国外から調達しており、同社は継続的に提携企業に対する監査を実施している、という。

 シャバールの新しい工業センターでは、AP通信の記者が、集中廃水処理施設は強化されたとする当局者の主張と相反し、実は処理施設がまだ十分には機能していないことを発見した。

 この処理施設に勤務する中国人エンジニアは、黙して何も語ろうとしなかった。

 廃水処理施設の稼働に遅延が生じていることに加え、新たな問題が生じている。固形廃棄物を備蓄していると思われる溜め池の護岸に亀裂が繰り返し生じているのだ。このせいで、廃棄物と雨水が混じり合い、川へ流入することによってさらに深刻な汚染が生じている。

 「これは憂慮すべき事態だ。護岸は何度も修復されてきたが、モンスーンによって再びたくさんの亀裂が生じている」と廃水処理施設のコンサルタント、デロワール・ホセイン氏は言う。

 セーブ・ザ・エンバイロメント・ムーブメントの議長、エイブ・ナーサー・カーン氏は先週、新しいシャバールの製革工場地域には複数の構造的な欠陥があり、同地域で深刻な汚染が発生している、と語った。

 「廃棄物によって川の生命が死に絶え、土壌は汚染され、環境全体が破壊されてしまった。危険な化学物質がいまだに川へ流れ込んでいる」とカーン氏は言う。

 そして、有毒な革なめし工場を極度に汚染が進んだハザーリーバーグから移転させたことは、ただ単に環境災害を別の場所に移動しただけに過ぎないことは明らかだ、と語った。

 「政府は、環境については何も配慮していないようだ。ここシャバールでも同じことが起きつつある」とカーン氏は言う。「当局者が汚染による深刻な環境への影響をきちんと理解していないことに深い失望を覚える。この汚染は回避することができたはずだ」と同氏は言い、苦情を申し立てても当局は「耳を貸そうともしない」と憤慨した。

 バングラデシュ人の革製品生産者たちはこの件について一様にコメントを出し渋った。

 大手の輸出工場関係者は、同社は関係当局の手落ちの巻き添えを食らいたくない、と語った。

 ある関係者は「我々は繰り返し苦情を申し立てたが、汚水処理施設はいまだに完全にはその機能を果たしておらず、革なめし工場内部の改革と刷新のペースも遅々として一向に前進しない」と、報復を恐れて匿名を条件に話した。そして、「政府は、新しい製革工場地域のすべてのインフラ構造を整える全責任を背負っている。しかし我々は、ここで何一つ貢献していない」と言った。

By JULHAS ALAM and MARTHA MENDOZA, Associated Press
Translated by ka28310 via Conyac

Text by AP