「川が死んでいく」革なめし工場による環境汚染が再び深刻化 バングラデシュ

AP Photo / A.M. Ahad

 靴、ベルト、財布および小銭入れに使われる革の前処理を行うバングラデシュの革なめし工場は、毒性の強い化学廃棄物を河川に廃棄して環境を汚染し、また児童への労働搾取を行ったため政府に操業停止を命じられた。しかし新しい工業団地へ移転して操業を再開して以来1年以上もの間、付近を流れる河川に再び有毒物質を垂れ流し続けている。

 「工場のせいで川が死んでいく。水の色が変わり果ててしまった」と、日雇い労働者として工場で働く地元の住民、アブダス・シャクール氏は先週、AP通信の記者に語り、「私は何十年もの間ここに住み続けている。川の状態が昨年1年間で劇的に悪化した」とも述べた。

 牛皮の毛を除去し、柔らかい革に仕上げる作業は汚染を伴う可能性がある。ダッカ近郊のハザーリーバーグには以前、150以上もの革なめし工場が存在した。1年前まで、大気中に化学物質や剥いだ革の破片の腐った臭気が充満して非常に有害だったため、環境保護主義者たちからは世界中で最も激しく汚染された地域の1つとして何度も悪評を立てられていた。隣接するベリガンガ川は18万人もの住民の貴重な飲料水の供給源だが、この川も汚染されたと考えられている。

 2017年4月、国際的圧力の下で、政府はハザーリーバーグの革なめし工場への電力供給を停止し、シャバールにある新たな製革工場地域への移転を命じた。

 現在、AP通信は、新しい場所に移転した革なめし工場が化学物質をダルシュワリ川に垂れ流し、有毒な廃棄物を空き地に投棄している事実を把握している。下水道や廃水処理場は存在するものの、大量に出る有害廃棄物を処理するには不十分である。

 ヒューマン・ライツ・ウォッチの環境プログラム副所長を務めるリチャード・ピアスハウス氏は「以前から予見されていたが、これは大惨事だ。皆、問題の本質は技術的な課題、つまり、集中廃水処理施設の不足であって、政策的な問題ではない、と自分に言い聞かせている。しかし、バングラディシュの製革業界は、最終的に政府当局者が本気を出して法律を施行するまでは、児童就労や労働上および環境上の健康危機など数々の基本的な問題に苦しめられるだろう」と語った。

 ニューヨークに拠点を置く労働の権利を扱う非営利団体のトランスペアレンテムは、ハザーリーバーグから革を仕入れている、もしくは、同地に革なめし工場を所有しているアメリカやヨーロッパの企業に対し、革製品の生産過程で生じる汚染物質の浄化を支援するよう呼び掛けている。これらの企業には、クラークス、コーチ、ケイト・スペード、メイシーズ、マイケル・コース、シアーズ、スティーブ・マデンおよびティンバーランドが含まれる。また、トランスペアレンテムはドイツを拠点とする靴やスポーツウエアのチェーン店であるダイヒマンや、アメリカを拠点として靴のデザインと販売を行うハーバー・フットウエア・グループとジェネスコの2社にも呼び掛け、さらに多くのブランドが汚染浄化支援に乗り出すよう要請している。

 「バングラデシュ政府と製革業界の責任は、ハザーリーバーグを浄化し、さらに、同じ轍を踏まないようシャバールでの全面的な環境の激変を防止することだ。ハザーリーバーグもしくはシャバールにある革なめし工場と提携している生産者から皮革を購入したことのあるブランドは、影響力を持っている。だからこそ、改革の責任の一端を担う必要がある」とトランスペアレンテムの代表者であるE・ベンジャミン・スキナー氏は言う。

Text by AP