まるで本物の赤ちゃん人形「リボーンドール」とは? 必要とする人々の切実な事情

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◆リボーンドールからみる不妊問題の深刻性
 アメリカ政府機関であるOffice on Women’s Healthでは、国内の15歳から44歳の女性のうち610万人、女性人口全体の1割が不妊であると発表している。不妊の原因について医療機関などでさまざまな研究が行われ治療方法も進化している。しかし治療を受けても確実に出産できるという保証はなく、しかも高額である。ますます増加傾向にある不妊だが、中には子作りを断念し、リボーンドールで擬似育児を行う人々がいる。

 あるイギリス人の夫婦は子供が授かる可能性がないと診断されたが、一度は自分たちに似た子供を見たいという思いがリボーンドールの購入につながっている。この夫婦は英ミラー紙に自分たちの夢が叶ったと語っている。家には子供部屋が設置され、クリスマスには人形と家族旅行にも行き、記念写真を撮る。一見聞こえは悲しいかもしれない。しかし、子供を持てない辛さが人形の存在によって癒されているのは事実だ。

 また、援助を必要とする障害と自閉症を抱える女性は、子供を持つことができないと述べ、リボーンドールとともに暮らしている。女性として子供を育てたいという気持ちは変わらず、その思いを人形とのロールプレイで満たしている。世間からは奇異の目を向けられ嫌な気分になるというこの女性。さまざまな理由で人形を育児している人がいることを知ってもらいたいと願っているとインタビューに答えている(ウェールズオンライン)。

◆大人のままごとは異常行動か?
 人形は動かない、言葉も発しない、しかしセラピーのように痛んだ心を癒やす効果があることは見逃せない。しかしながら、母体から赤ちゃんを取り上げる擬似手術まで行われていることは癒しの一線を越えているのか? 子供が好むお医者さんごっこが進化したロールプレイまで誕生し、その異常性もメディアなどで取り上げられ議論を呼んでいる。

Text by 安藤麻矢