まるで本物の赤ちゃん人形「リボーンドール」、必要とする人々の切実な事情

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「リボーンドール」には欧米の根強いファンがいる。リボーン、つまり人間の蘇生を意味するシリコン製の人形は、巧妙に製造され本物の人間の乳児と酷似している。なぜリボーン人形が売れるのか2002年にeBayでの販売を皮切りに世界には多くのコレクターや愛好者がいる。元は趣味で作られていた人形だが、ネット上で販売され、まるで人間の赤ちゃんと見間違うほどの緻密な作りが話題を呼んだ。

 リボーンドールの所有者は自分たちをパパ、ママと呼び、授乳や、オムツ替え、乳母車でお散歩をしたりして、人形を本物の新生児のように扱う。多数の欧米メディアがこのような人形所有者の様子を報道したことで、世間では様々な声が上がった。それらは、怖い、心が壊れているなどのネガティブのものが多い。しかし、実際に人形の購入理由を知ると狂気というよりもむしろ社会問題がみてとれる。

                                                                                                                 

◆子を失った両親が求める人形
 拡大するリボーンドール市場を背景に、2005年にはInternational Reborn Doll Artistsというコミュニティーグループがアメリカで発足している。このグループには世界のクリエイターたちが参加し、人形作りに関する様々な意見を交換している。

 リボーンドール市場は主に、子供を失った夫婦、そして熱狂なコレクターによって支えられている。1体およそ数万円から高いものでは数十万円の値段がつくものまでクオリティーもさまざまだ。技術や素材が進化していることから近年のリボーンドールは一見では本物の人間と区別できないほど進化している。関節の動きや、顔の表情、排泄システムなど、人形は大人のおままごとの玩具とさえなっている。しかし、玩具というと何かが違う。特になぜ人形の需要があるのかの理由を知ると不妊などの問題が浮き上がる。

◆リボーンドールからみる不妊問題の深刻性
 アメリカ政府機関であるOffice on Women’s Healthでは、国内の15歳から44歳の女性のうち610万人、女性人口全体の1割が不妊であると発表している。不妊の原因について医療機関などでさまざまな研究が行われ治療方法も進化している。しかし治療を受けても確実に出産できるという保証はなく、しかも高額である。ますます増加傾向にある不妊だが、中には子作りを断念し、リボーンドールで擬似育児を行う人々がいる。

 あるイギリス人の夫婦は子供が授かる可能性がないと診断されたが、一度は自分たちに似た子供を見たいという思いがリボーンドールの購入につながっている。この夫婦は英ミラー紙に自分たちの夢が叶ったと語っている。家には子供部屋が設置され、クリスマスには人形と家族旅行にも行き、記念写真を撮る。一見聞こえは悲しいかもしれない。しかし、子供を持てない辛さが人形の存在によって癒されているのは事実だ。

 また、援助を必要とする障害と自閉症を抱える女性は、子供を持つことができないと述べ、リボーンドールとともに暮らしている。女性として子供を育てたいという気持ちは変わらず、その思いを人形とのロールプレイで満たしている。世間からは奇異の目を向けられ嫌な気分になるというこの女性。さまざまな理由で人形を育児している人がいることを知ってもらいたいと願っているとインタビューに答えている(ウェールズオンライン)。

◆大人のままごとは異常行動か?
 人形は動かない、言葉も発しない、しかしセラピーのように痛んだ心を癒やす効果があることは見逃せない。しかしながら、母体から赤ちゃんを取り上げる擬似手術まで行われていることは癒しの一線を越えているのか? 子供が好むお医者さんごっこが進化したロールプレイまで誕生し、その異常性もメディアなどで取り上げられ議論を呼んでいる。

Text by 安藤麻矢

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