リベラルな街でも黒人を即通報、8歳の少女も 米で広がる「不寛容」の波

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 トランプ大統領政権による、不法移民に対する「ゼロ・トレランス(不寛容)政策」が実施される中、最近アメリカのあちこちで白人による有色人種に対する嫌がらせまがいの行為が目立つようになってきた。しかも、そのような行為が起こるのは決して伝統的に人種差別が激しいといわれる地域だけでなく、カリフォルニア州などリベラルであるといわれる地域も含まれている。

◆白人女性が黒人を警察に通報する事件が頻発
 最近発生したこの「トレンド」で最も大きな問題になったのは、ペンシルバニア州フィラデルフィアのスターバックス・コーヒーで今年4月、白人女性店員が店内で待ち合わせをしていただけの黒人男性2人に対して警察を呼び、2人が逮捕・拘留された事件である。この店員はその後解雇され、スターバックスのCEOは男性2人に謝罪し、5月には全米中の店を1日閉めて人種に関するトレーニングを行った。この事件後、人々のスターバックスに対する印象が悪化したことは言うまでもない。

 サンフランシスコ・クロニクル紙のニュースサイト『SFGATE』によると、今年5月、カリフォルニア州オークランドの公園で「違法に」バーベキューをしていた黒人男性2人に対し、白人女性が警察を呼んだ。公園のバーベキューエリアは石炭を使用するものとそうでないものがあり、黒人男性は石炭を利用すべきでない場所で使用していたというのだ。

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 女性は2人の前で2時間ほど見張るように居座り続けたという。その後男性の妻である白人女性が現場を訪れて女性に事情を聞き、動画を撮影。そして問題の女性が警察を呼んだという経緯だ。この女性は後に「バーベキュー・ベッキー(BBQ Becky)」というあだ名を付けられ、些細なことで警察を呼んだ人種差別者として批判を受けた。

 そしてその後、似たような事件がオークランドの隣にある同州サンフランシスコで発生した。NBCベイエリアの報道によると、自分の住むアパートの敷地内でボトルウォーターを売りディズニーランドに行く資金集めをしていたという8歳の黒人の女の子を見た白人女性が、「水を売る許可証を持っていない」と警察を呼んだというのだ。

 その後女性はテレビに出演して、状況について「女の子と母親がうるさかったので注意しようと思った」と弁解したが時すでに遅し。女性は「パーミット・パティ(Permit Patty)」というあだ名を付けられ、動画がソーシャルメディアに拡散され、某企業CEO職を辞職に追い込まれたという。

◆白人女性が黒人少年と警官に暴力行為で逮捕
 上記3件の事件で、女性たちの行為は決して犯罪ではない。しかし、ごく小さなことに過敏に反応して警察を呼ぶという行為は「話し合い」というコミュニケーションを無視した反社会的行為とも言えるだろう。

 しかしその後、今度は南部サウスカロライナ州で仰天の事件が発生した。CBSニュースの報道によると、コミュニティ用のプールにいた15歳の黒人少年と友人に対し、白人女性が「あなたたちはここに属していない」と暴言を吐いたばかりか、黒人を蔑視する人種差別的発言をし、おまけに殴りかかったというのだ。しかも、女性は通報で駆けつけた警官2人に対しても暴力を振るうなどして現行犯逮捕された。

 この動画もSNSでシェアされ、人々は当然この女性を前述した別の2人と関連付け、「プール・パトロール・ポーラ(Pool Patrol Paula)」というあだ名をつけた。

◆白人に潜む無意識の偏見
 上記のような行為は、アメリカでは決して今始まったことではないだろう。しかし、白人優越主義を認めているような言動をするトランプ大統領の下、今まで「洞窟に隠れていた」このような人々が、堂々と出て来て、差別行為を実行に移している印象はある。そしてどの件でも、根底にある問題はスターバックスでの一件と同じ「無意識の偏見(Implicit Bias)」である。

 警察を呼んだ白人女性たちの頭には、おそらく「黒人=何か悪いことをしている」という偏見があったであろうことは想像に難くない。アパートで水を売っていたのが白人の女の子だったら、女性は果たして警察を呼んでいただろうか。この国では今もなお多くの白人の頭の中に、自分でも意識していないであろう有色人種に対する差別意識が存在していることを感じざるを得ない。

Text by 川島 実佳