“ノマド”に転落したアメリカの老人たち アマゾン倉庫で働き、車で放浪生活

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 普通の生活を送っていたが、経済的理由から家を捨て、車でキャンプサイトを転々としながら季節労働者として働く。そんな生活を余儀なくされた人々を取材し、格差の広がる21世紀のアメリカでサバイバルする人々を描いた書籍「ノマドランド(Nomadland)」がアメリカで9月に出版され、話題を呼んでいる。登場する人々の生き方を通し、アメリカ社会の知られざる問題を提示した、異色のノンフィクション作品となっている。

◆ミドルクラスからの転落。家を捨てたノマドはハイウェイを行く
 著者のジェシカ・ブルーダー氏は、数百万人のアメリカ人にとって、伝統的ミドルクラスの生活は不可能になっていると述べる。同氏は、常に赤字の家計簿を見て、「今の生活の中で何をあきらめれば生きていけるのか」と考えた末、家を捨てて、キャンピングカーやバン、さらには普通の乗用車で、全米を移動してキャンプ生活する人々の存在を知る。そして3年間に渡り数百人の自称「ワーキャンパー(Workamper、働いてキャンプする人々)」を取材した。そして自らもバンを購入して、キャンプ場や彼らの職場をまわって、この本をまとめた(ガーディアン紙)。

 ブルーダー氏が出会った人々の多くは、すでにリタイアして老後を迎えているはずの60~70代で、元主婦、タクシー運転手、一流企業の幹部など、その経歴は様々だ。2000年代後半の住宅ローン危機や金融危機で家や仕事を失った人も多く、ほとんどが経済的に働くことをやめられない、または家賃が払えないという事情を抱えている(ガーディアン紙)。人種的には、白人が多いと同氏は指摘している(ニューヨーク・タイムズ紙、以下NYT)。

Text by 山川 真智子