孤独な高齢者は金銭詐欺に合いやすい その理由とは

imtmphoto / Shutterstock.com

◆孤独の緩和に向けた取り組みにより詐欺を撃退する
 我々は詐欺対策チームと共同で調査を実施し、被害者の体験談を収集している。そしてより効果的な対策の特定と、詐欺被害者支援の専門家や詐欺の標的となり得る人々に向けたガイドラインの作成にも取り組んでいるところだ。孤独など、詐欺師に取り込まれてしまう要因を特定することは、詐欺防止・予防対策のひとつである。

 孤独は精神及び身体の健康に重大なリスクを及ぼす。それはどの年齢層にも言えることだ。しかし孤独に陥る原因と多く挙げられるのは、近親者との死別や健康状態の悪化、認知機能障害の発症といったある特定のライフイベントである。イギリスでは80歳以上の高齢者の10人に3人が孤独を感じており、この割合は他のどの年齢層よりも高かった。

 我々は過去の研究をもとに、孤独を緩和するために効果的な対策を見つけ出した。まずは福祉を充実させること。そして人々のレジリエンスを確立し、社会との繋がりを構築することが孤独の緩和に繋がる。

 高齢者が自尊心を持てるように、コミュニティの活動への参加を促し、社会に貢献する場を設けることが、レジリエンスの確立に繋がる。それにより高齢者が詐欺師の相手をしてしまう可能性も減らすことができる。また啓蒙活動を実施し、詐欺から身を守るための知識を広めることも重要だ。金銭問題に関する意識の向上、知識の普及を目的とし設立された団体もあるので、力を借りることができるだろう。さらにFriends Against ScamsScamsmartなどの取り組みにより作成された教材も利用できる。

 詐欺被害により推定50~100億ポンド (約7218億~1兆4437億円) が毎年失われている。被害者の平均年齢は75歳とされている。高齢化が進む現在、イングランドの65歳以上の高齢者で、独居している人の数は増加傾向にあり、2015年の350万人から2030年には497万人に増加すると予測されている。つまり社会が孤独の緩和に向けた具体的な取り組みを行わなければ、詐欺被害件数が大きく増加する可能性がある。それは市民の健康と幸福を損ない、経済的にも大打撃を受けることになるだろう。

This article was originally published on The Conversation. Read the original article.
Translated by t.sato via Conyac

The Conversation

Text by The Conversation