“6歳児が1人で電車通学!?” 海外が「尋常でない独立性」と驚く理由とは?
アメリカで今月はじめ、日本の私立小学校に通う6歳の少女のビデオがウェブ上で注目を集めた(アトランティック・シティラボ、ギズモード、タイムズ・ピカユーン・ノラ等)。また、中等科に進む9、10歳頃から子供たちが電車通学を始めるドイツでさえ、大手ツァイト誌が「なぜ日本の子供たちはより独立しているのか」というタイトルで記事を引用している。
イギリスやアイルランドでは、9月24日にイギリスで、日本人とアメリカ人夫婦のナオミ・モリヤマ氏とウィリアム・ドイル氏共著の『世界でいちばん健康な子供たちの秘密』Secrets of the World’s Healthiest Children (Piatkus)という本が発売されたことをきっかけに、日本式育児に関する特集が組まれた(テレグラフ、アイリッシュ・インディペンデント)。両氏によると、電車通学でなくても、「徒歩での通学」による「60分程度のエクササイズ」が健康に非常によいとされている。
子供が自由に動き回れる社会については、タイム誌でマリアン・マレー・ブキャナー氏が今年7月、日本で迷子になった6歳の息子がすぐ無事に見つかった経験をもとに「日本人のように育児する方法」との記事を書いている。
どうやら、欧米で日本式ペアレンティング(育児)に注目が集まっているようだ。
◆子供を1人にさせない親たち
アメリカで「ヘリコプター・ペアレント」と呼ばれる親たちが登場して久しい。ヘリコプターのように頭上を旋回して子供を監視し、何か問題が起こればいちいち口出しして、問題解決を肩代わりしてしまう親たちだ。日本でもモンスター・ペアレントと同様に使われることもある。
主に大学生など、本来は成人した、あるいはほぼそれに近い年齢の子供たちに対し子離れできない保護者を指すが、北米ではそもそも、幼い頃から子供につきっきりにならざるを得ない。車社会であることはいうまでもないが、定められた年齢以下の子供(自治体によるが、だいたい12歳前後)を1人で歩かせたり車に残したりすると、保護者が逮捕されるという事態が実際に起こりうる社会だからだ。6歳児が一人で電車通学するというのは、まさに驚愕の出来事なのである。
◆「尋常でないレベルの独立性」
もちろん、日本でもこれは都市部で私立の小学校に通う一部の子供たちのことだろう。ビデオ内では14年続く長寿番組『はじめてのおつかい』なども紹介されている。単独で行動する日本の子供たちは欧米の子供たちには「クール」に映るようだが、大人はというと、北米のみならずイギリスやオーストラリアの親たちも懐疑的なようだ。
シティラボではこの「尋常でないレベルの独立性」を、日本の若者についての博士論文を書いた文化人類学者のドウェイン・ディクソン氏が「(日本の)若者は早い段階で、理想的には地域社会の誰にでも助けを求めることができる、ということを学ぶ」と分析し、「グループの信頼・依存」を理由にあげている。
◆犯罪率の低さ?
もう1つ理由として挙げられるのは、長年言われている日本の「犯罪率の低さ」だ。経済協力開発機構(OECD)の「ベター・ライフ・インデックス」によると、昨年日本人が殺人や暴力などの凶悪犯罪の犠牲になった確率は前年よりさらに低下した1.4%で、OECD平均の4.0%を大幅に下回り、アイスランドやカナダと並ぶ世界で最も安全な国とされている。
しかし、子供を持つ親としては、数字だけで表される「社会の安全性」に疑問を持たずにはいられない。日本では今年だけでも乳児からティーンエイジャーまで、子供が次から次へと異常な犯罪の犠牲になっている。また、痴漢行為をはじめ性犯罪での泣き寝入りなどは考慮されているのか。
筆者はカナダとドイツで育児を体験しているが、子供が凶悪犯罪に巻き込また事件は、数えるほどしか記憶にない。まれに発生すると、国中が怒り、議論し、風化させないように努力する。学校でも、(遠方でスクールバスを利用している場合を除いて)保護者が送迎で毎日顔をあわせるので、どの子供の親が誰であるかなどを地域社会が驚くほどよく把握しているし、連帯も強い。
一方で、うっかり一瞬目を離しただけで逮捕される可能性があるというのは、たしかに現実的ではなく、煩わしい場合もある。児童と保護者の双方が安心して行動できる地域社会とは何かを、改めて考える必要があるかもしれない。