絶滅の危機に瀕するオランウータン 世界が注目する保護活動を日本企業も支援
非常に高い知能を持ち、しぐさや表情が人間に近いこともあって、動物園でも人気者のオランウータン。その名前はズバリ、マレー語で「森の人」という意味だ。その生態の解明は、人類のルーツを探る意味でも大変重要だ。生物多様性の保全の観点からも、野生のオランウータンの保護は人類に課せられた重大な義務だと言えるだろう。
しかし、オランウータンが生息する東南アジアのボルネオ島とスマトラ島では森林伐採が進み、その生息数が激減している。「この100年で80%減った」(2/11付日経新聞)、「16年間で半減」(2/21付毎日新聞)と、現在進行形の危機的な状況が日本国内でも伝えられている。さらに、現地でさまざま保護活動を主導する世界自然保護基金(WWF)とパートナーシップを結び、支援に乗り出す日本企業も現れている。「森の人」の窮状は、もはや遠い国の出来事だからと無視できないところまで来ているのだ。
◆「パーム油」のために森林が切り開かれる
オランウータンは、インドネシアのスマトラ島と、同国とマレーシア、ブルネイにまたがるボルネオ島(カリマンタン)にのみ生息している。ドイツ・イギリスなどの研究チームが米科学誌に発表した調査報告書によると、ボルネオ島のオランウータンの生息数は1999年から2015年の16年間で14万8500頭も減少(毎日新聞)。さらに今後35年間では4万5000頭以上が減少すると予測されている。両島合わせた全体数では、100年間で80%減ったという(日経新聞)。
スマトラ島ではさらに深刻だ。スマトラオランウータンの生息数は6600頭程度とみられ、絶滅の危険性が極めて高いとされている。APは、その中では最も生息密度が高い北部のトゥリパ湿地林の最近の状況を伝えている。「トゥリパ泥炭湿地林は世界有数のオランウータン生息地とされてきた。しかしアブラヤシ農園の開発によりオランウータンが危機に晒されている。地球上で最も消費される植物油であるパーム油を生むアブラヤシを植林するため、湿地林の数千エーカーにも及ぶ原生植物が伐採されているのだ」といい、同地では既に生息数は200頭を切ったという。
パーム油は、主に森林を切り開いた農園で栽培されるアブラヤシの実から取れる。調理油、口紅、絵の具、シャンプー、インスタント麺などありとあらゆる食品・生活用品の原料に使われている。WWFによれば、日本のスーパーで販売されている商品の約半数にパーム油が使われているほどだ。その需要は世界で右肩上がりに増えており、比例してアブラヤシ農園の開発も進んでいるのだ。時には違法な焼き畑も行われ、オランウータンをはじめとする野生動物の生息地がどんどん狭くなっている。
「わずかに残った森林地帯に追いやられた動物たちは、四方をアブラヤシ農園に囲まれて行き場がない。このような状況では、動物たちが餓死してしまう。あるいは食べ物を探してジャングルの外に出てきたところで、農園の従業員に見つかれば殺される」とAPは書く。
◆野生ネコなどにも絶滅の懸念
アブラヤシ農園の開発だけでなく、製紙用のアカシアやユーカリを植えるために熱帯雨林が伐採されるケースも多い。WWFによれば、日本で売られているコピー用紙の原料の約80%はスマトラ島・ボルネオ島を含むインドネシア産だという。また、オランウータンの子供は違法ペットとして高く売れるため、密猟が後を絶たない。この場合、我が子を守ろうとする母親が殺されることも少なくない。
これらの形で生存が脅かされている個体については、捕獲して安全な場所へ移す活動が行われている。APは「スマトラオランウータン保全プログラム」のレスキュー部隊の活動を次のようにレポートしている。「捕獲された雄オランウータンは『ブラック』と名付けられ、アチェ・ベサール県ジャンソーにあるオランウータンの野生復帰支援施設に約8時間かけて輸送された。この施設では動物が新たな野生集団を形成できるようジャングルに放っている。これまで約100頭の動物が野生復帰を果たしており、ブラックもまたそこに加わった」
森林伐採や密猟の影響を受けているのはオランウータンだけではない。たとえば、スマトラ・ボルネオ両島には「島」としては最多の7種の野生ネコが生息するが、ウンピョウ、ベンガルヤマネコといった森に住む野生ネコの生態は明らかになっておらず、効果的に保護するのが難しい状況だ。WWFは「保護するためには森そのものを守っていくしか方法はない」と、野生ネコが暮らせる森林保全のための寄付を募っている(キャンペーン「野生ネコの王国」=2018年5月末まで)。
◆トヨタが支援に乗り出す
WWFは、上記のようなキャンペーンも活用しながら、スマトラ・ボルネオ両島全域で森林パトロールなどの幅広い保護活動を行っている。その中で、現地の産品を購入している我々日本人にできることは、持続可能な森林開発を経て生産された商品を選ぶ「責任のある購入」をすることだろう。WWFは、直接輸入に携わる日本のメーカーや商社に向け、環境や地域社会に配慮した「責任ある木材の調達」などを呼びかけている。
こうした活動に積極的に賛同している日本企業の筆頭が、トヨタ自動車だ。同社は2016年に日本企業、また、自動車メーカーとして初めてWWFと5年間のパートナーシップを結び、WWFの「生きているアジアの森プロジェクト“Living Asian Forest Program”」を実施。同プロジェクトに基づいた生物調査や周辺住民への生活支援活動や、木材、紙パルプ、パーム油などの森林資源の生産・消費を持続可能なものにするための活動に、資金援助などを行っている。特に自動車のタイヤの原料となる天然ゴムの生産・消費の見直しは、世界最大の自動車メーカーとして責任を持って取り組むべき活動だと位置づけている。
責任は大企業だけでなく、私たち消費者一人ひとりが負うべきだ。トヨタ自動車では、一般向けに、楽しみながら森林破壊の問題に関心を持つことができる動画を公開している。「動物がスゴイ方法で逃げまくる」と題したWEB限定の動画では、アジアゾウ、マレーグマ、マレーバクの3種類の野生動物が、足の裏で異音を察知して危険から逃れる様子などを、人気声優の島崎信長さんのナレーションで紹介している。トヨタ自動車は「『そんな逃げ上手な野生動物でも逃げられないもの』として、環境破壊をあげることで、環境保全の大切さとトヨタ自動車の取り組みを伝える動画となっております」と主旨を説明している。
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