パーム油のために生息地を燃やされているオラウータン インドネシア

Binsar Bakkara / AP Photo

【インドネシア、トゥリパ泥炭湿地林・AP通信】 トゥリパ泥炭湿地林は世界有数のオラウータン生息地とされてきた。しかしアブラヤシ農園の開発によりオラウータンが危機に晒されている。地球上で最も消費される植物油であるパーム油を生むアブラヤシを植林するため、湿地林の数千エーカーにも及ぶ原生植物が伐採されているのだ。

 パーム油は調理にはもちろん、リップスティックから絵具、シャンプー、さらにインスタント麺にまであらゆる製品に使用される。インドネシアは世界でもトップクラスのパーム油生産国だ。そしてパーム油の需要が高まるにつれ、アブラヤシ農園の開発が進んでいる。トゥリパでは企業の手により湿地の水が抜かれ、地球温暖化を招く二酸化炭素が大気中に放出される原因となっている。また時には違法とされる焼畑も行われ、原生植物の森が焼き払われている。

 このような行為がオラウータンなど絶滅危惧種の生息地を奪い、わずかに残った森林地帯に追いやられた動物たちは、四方をアブラヤシ農園に囲まれて行き場がない。このような状況では、動物たちが餓死してしまう。あるいは食べ物を探してジャングルの外に出てきたところで、農園の従業員に見つかれば殺される。生まれて間もない動物は捕獲され、違法ペットとして売られることもあり、母親は我が子を守ろうとして殺される場合もある。

 8月10日、スマトラオラウータン保全プログラムから派遣されたレスキュー部隊が、インドネシア自然保護局と共にトゥリパ泥炭湿地林に入り、アブラヤシの植林地となったエリアにおいて生存が報告されたオラウータン親子の捜索活動を行った。計画ではオラウータンを鎮静剤で落ち着かせてから別の場所に移送するはずだったが、部隊が到着した時には親子の気配はなかった。その代わり20才前後と思われる50kgの雄オラウータン1頭を発見した。この1頭もまた行き場をなくしていたため、部隊はどうにかそれを落ち着かせ、捕獲用のネットに入れてジャングルから運び出した。

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捕獲用ネットの中にいるオランウータン AP Photo/Binsar Bakkara

 捕獲された雄オラウータンは「ブラック」と名付けられ、アチェ・ベサール県ジャンソーにあるオラウータンの野生復帰支援施設に約8時間かけて輸送された。この施設では動物が新たな野生集団を形成できるようジャングルに放っている。これまで約100頭の動物が野生復帰を果たしており、ブラックもまたそこに加わった。

 スマトラオラウータンは絶滅の危険性が極めて高いとされ、その生息数は6,600頭しかないと推定される。そのうちトゥリパ湿地林に生息しているのは200頭以下と思われるが、それでもオラウータンの生息密度が最も高い場所のひとつだ。野生のオラウータンはインドネシアのスマトラ島と、インドネシアとマレーシアが共有するボルネオ島の2つの島でしか発見されていない。オラウータンの種類は各島で異なる。

「野生のオラウータンを捕獲したくてしている訳ではない。捕獲作業は困難で、大きなストレスと考え得るすべてのリスクを負うものだ」と言うのは、レスキュー部隊の指導者であるイアン・シングルトン氏だ。1990年代からスマトラオラウータンの研究を続けている。「捕獲は本当に最後の手段。今もなお生息地の破壊が進む中、多くの動物がそれだけ過酷な状況に置かれているということだ」。

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スマトラオラウータン AP Photo/Binsar Bakkara

 トゥリパ泥炭湿地林は、スマトラ島北部の2,600万ヘクタール(6,400エーカー)の範囲に広がるルセル生態系の一部である。地球上で野生のオラウータンやトラ、ゾウ、サイが共存する最後の場所だ。湿地林の全域で伐採が進み、パルプや紙を得るための植林、採鉱による危機にもさらされている。2012年にはアブラヤシ農園を開発するため更地を作ろうと意図的に火がつけられ、大規模な火災が湿地林を襲った。これにより野生動物の命が奪われ、煙が周辺一帯を覆った。

 インドネシア政府は2012年、トゥリパ湿地林の1,000ヘクタール(2,470エーカー)を違法に燃やしたとして、アブラヤシ農園を営む企業PTカリスタ・アラムに対し訴訟を起こした。その3年後、企業側に罰金と湿地林の修復費用として2,600万ドル(約28億6千万円)の支払いが命じられ、さらにマネージャーには懲役3年が言い渡された。しかし同年7月に企業が政府を訴え、これまで罰金は一切支払われておらず、マネージャーの刑期もまったく果たされないままだ。

By BINSAR BAKKARA
Translated by t.sato via Conyac

Text by AP