買えない、借りられない…深刻化する欧州の住宅危機

ポルトガル政府の住宅政策の改善を要求するデモ(リスボン、9月30日)|Lua Eva Blue / Shutterstock.com

◆EU平均家賃・住宅価格大幅上昇でホームレス増加
 EU加盟27ヶ国全体では、2022年に15歳から29歳のヨーロッパ人の4分の1以上が、過密状態で暮らしている。アイルランドでは、18歳から24歳の30%が両親と同居しており、5年間で10ポイント近く増加している。

 EU諸国で公共住宅、協同組合住宅、社会住宅を提供する団体と協力する統括組織「ハウジング・ヨーロッパ」によると、2022年までの10年間で、EUの平均家賃は19%上昇し、住宅価格は47%上昇した(フランス24、10/3)。

 住宅供給も危機に瀕している。住宅需要が減少するなか、ユーロ圏全域の住宅建設は2020年4月以来の低水準まで減速している。特にドイツは深刻な問題に直面している。ミュンヘンにあるIFO研究所の2023年版レポートによると、2023年から2025年にかけて新築住宅が32%減少すると予想されている。

 深刻な住宅危機の影響で、ブリュッセルに本部を置く、ホームレス支援に取り組む各国組織のヨーロッパ連合「FEANTSA」によると、EUのホームレスの数は2019年以降30%増加している。FEANTSAの副理事長、ルース・オーウェン氏は「EUでは毎晩90万人近くが路上で寝たり、ホームレスの宿泊施設に滞在したりしている」と危機感を示す。(フランス24)

 一方、ヨーロッパには成功例もある。オーストリアの首都ウィーンでは、市は低所得世帯への財政支援だけでなく、住宅の建設や改修に約5億ユーロを投資し、人口の60%近くが、市営住宅や国の補助金交付の住宅に住んでいる。

Text by 中沢弘子