イビサ島では1年で家賃20%増 人気観光地で居場所なくす地元民

スペイン・マジョルカ島のパルマ市の通り|Joan Llado / Shutterstock.com

◆26万の月給で17万円の家賃が払えるか?
 ベルギーの公共放送RTBFによれば、イビサ島の不動産もここ1年で販売価格が16%、賃貸価格が20%上がった。そのため、現在一軒家の購入には100万ユーロ(約1.4億円)、アパートの賃貸も最低月1200ユーロ(約17万円)かかり、地元民の大半には手の出ない価格だ。実際に2022年の不動産売買取引の40%は買い手が外国人だった。

 不動産価格の高騰は、島内の労働力確保も困難にしている。たとえば、同島の看護師の月給は平均1800〜1900ユーロ(約26万~27万円)で、1200ユーロの家賃を払うには給料の3分の2を充てなければならず、これではとても暮らしが成り立たない。そのため、島内の看護師のほとんどは数人が共同でアパートを借りたり、キャラバンに寝泊まりしており、短いスパンで仕事をやめ島を出てしまうという。学校などの公共機関も同じく労働力確保に苦労している。(同)

◆島であることでひずみがより大きく
 外国人による不動産買い占めと価格上昇が原因で、本来あるべき島民の生活が成り立たなくなっている今の状態は一つのオーバーツーリズムだ。大陸続きではなく島であることが、この問題をさらに深刻にしていると言える。

 イビサ市長もバレアレス諸島州知事も手をこまねいているだけではなく、住民以外の不動産購入を禁止できないかとスペイン政府と欧州連合(EU)に働きかけている。また、2月にはバレアレス諸島州がハイシーズンである夏の観光客数を今夏から制限することを発表した。今後、2022年の観光客数1647万人を超えることがないようにするという決断だ。(VVA、2/7)

 観光客には来てほしいが島民がいなくなっては元も子もない。行政は手遅れになる前にそのあたりのバランスを見つける必要に迫られている。

Text by 冠ゆき