イビサ島では1年で家賃20%増 人気観光地で居場所なくす地元民

スペイン・マジョルカ島のパルマ市の通り|Joan Llado / Shutterstock.com

 パンデミックなどなかったかのように国境間の行き来が自由になった欧州では、観光が再び大きな経済の動力となった地域も少なくない。だが、その人気のあまり、地元民の安住が脅かされる事態も起きている。特に深刻なのは島におけるオーバーツーリズムだ。

◆ロックダウンやリモートワークが変えた住居欲
 フランスでは、パンデミック以来、不動産の価格が上昇した。ロックダウンや自宅隔離、リモートワークを経験したことにより、人々が、より居心地の良い住環境を求めるようになったためだ。

 そのなかでも特に人気が高まったのが、フランス西部ブルターニュ地方の海辺だ。ブルターニュで最もセカンドハウスが多いモルビアン県では、不動産価格が2021年だけで15%、2017年から2022年までの5年間だと38%上がっている。同県にある小さな島や半島の先端の町では、不動産価格の上昇率がさらに高い。ベル・イル・アン・メール島で60%、半島の先端にあたるアルゾンで80%、キベロンで70%といった具合だ。ちなみにキベロンは、フランスで最もエアビーアンドビーの検索率が高い町でもある。(ル・モンド紙

 セカンドハウスの購入やエアビーアンドビーなど投資目的の不動産購入が増えたことで不動産価格の上昇に拍車がかかり、その結果、地元民が土地を離れなくてはならなくなる状況も生まれている。ル・モンド紙の記事は、ベル・イル島の若い夫婦が独立したくてもできずにいるケースを挙げている。

◆労働者の住む場所がない島?
 同じようなことは地中海に浮かぶスペインの島イビサでも起こっている。イビサ島はマヨルカ島やメノルカ島などとともにバレアレス諸島をなす。このバレアレス諸島は、スペインで2番目の人気を誇る観光地で、パンデミック前の2019年には1645万人の観光客が訪れた。パンデミックの影響で、2021年には870万人まで減少したが、2022年には1647万人を超える観光客でにぎわった。ちなみに、バレアレス諸島の人口は120万人強(そのうちイビサ島の人口は15万人弱)で、人口に対していかに観光客が多いかがよくわかる。

Text by 冠ゆき