シリコンバレーのエンジニア大量解雇が何をもたらすのか アジアへの恩恵とは?

Marcio Jose Sanchez / AP Photo

◆解雇者が持つネガティブイメージ
 解雇されたテクノロジー企業の元エンジニアのコメントが多く報道されているが、多くはネガティブなものだ。解雇通知はとても「冷たいもの」で対面ではなく通知だけがメールでくるので「顔が見えないもの」と、孤独感を味わったことをグーグルの元エンジニアはビジネスインサイダーに語っている。一方で、解雇は予見していたともいう。それは、在籍時に出張が制限されたり、予算が削減されたり、雇用の一時停止などが行われたり、福利厚生や交際費についても大きく削減されていたからだ。海外の解雇プロセスは、日本とは大きく異なるが、多くの元エンジニアに衝撃を与えたものだったという。

◆大量解雇がもたらすプラスの面
 解雇というネガティブなイメージの報道が多いなか、ポジティブな報道もある。大量解雇された優秀なエンジニアを雇用したいと熱望する企業に関するものだ。たとえば、シンガポールに本社を置く、さまざまな業界にアウトソーシングサービスを提供する企業TDCXである。世界各国に展開しているが、このアメリカでの大量解雇の人材と、アウトソーシング需要の増加がアジアに大きな恩恵をもたらす可能性があるという。(テックインアジア

 また、優秀な起業家が多く生まれる期待がある。現在ベンチャーキャピタルの不足や金利の上昇などで、資金調達が厳しい現状であると言われつつも、解雇されたエンジニアたちが新たなスタートアップを立ち上げることを検討していて、世の中を変えてしまうような新たなビジネスが生み出される期待がある。

 ネガティブな報道とは異なり、ギーグワイヤーによれば、解雇されたエンジニアのほとんどが3ヶ月以内に職を見つけているという。その新たな就職先は小売、金融、製造、その他の業界のエンジニアリングなど多岐にわたる。もちろん、解雇されたのが優秀なトップエンジニアだからという側面は否定できないのだが、このように悲観的ではないプラスの側面の見解もあることは確かだ。

Text by 齊田興哉