最低賃金が低い日本、過去最大31円引き上げ 海外メディアはどう見た?
◆引き上げても低い… 賃金低迷は日本ならでは?
過去最大の引き上げとはいえ、日本の最低賃金は海外に比べればまだまだ低い。アメリカの連邦法では最低賃金は時給7.25ドル(約965円)だが、多くの州ではこれより高い水準に設定されている。オーストラリアは世界一高く、時給21.38豪ドル(約1976円)となっている。(クオーツ)
ロイターは、日本の平均賃金は人手不足にもかかわらず、2000年以来ほとんど上昇していないと指摘。インフレが抑制されていることを口実に、固定費の増加に慎重な企業は賃上げを見送ってきたとしている。
クオーツは、日本の賃金が低く抑えられてきたのにはさまざまな要因があるとし、その大きな要因が慢性的なデフレだと指摘する。消費者が低価格に慣れてしまったため、企業は値上げによる客離れを心配し、コスト増を消費者に転嫁せず人件費を節約することで対応してしまった。さらに日本では文化的に雇用の安定が重要であり、労働者は賃金の上昇を犠牲にしてでも同じ会社で働き続けることを選んだと同誌は述べる。
◆持続性が課題 生産性がカギ?
日本のコア・インフレ率は日銀の目標である2%を上回っているが、日銀の見通しでは来年度までに物価はこの水準を下回るとされている。日銀の黒田総裁は、商品価格の一時的な高騰を超えてインフレが持続可能になるには賃金上昇が必要という考えを繰り返し示している。持続的に2%以上を維持するためには、3%の着実な賃上げが必要と見られている。
SMBC日興証券の丸山義正氏も、重要なのは一過性のものではなく、持続可能な方法で賃上げを推進することだと述べる(ロイター)。農林中金総合研究所の南武志氏は最低賃金の引き上げについて、企業は賃金を節約したり生産コストを削減したりするよりもコスト圧力を消費者に転嫁するようになり、需要に基づくインフレがまだ弱い日本のような国にとっては良いことだと述べている(ブルームバーグ)。
一方、ニッセイ基礎研究所の上野剛志氏は、最低賃金引き上げは家計を助けるが、企業にとってはコストの上昇を意味すると指摘。企業が生産性を向上させない限りパート労働者の労働時間削減などになりかねず、必ずしもプラスの経済成長にはつながらないと述べている。(ブルームバーグ)
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