日本行きたいのに、いつまでセミ鎖国? 続く厳しいコロナ入国規制、海外が危惧

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◆外国人不信も? 国民が厳しい対策を支持
 エコノミスト誌は、パンデミックは日本の外国人に対する永続的な懐疑論をよみがえらせたとする。京都精華大学の前学長ウスビ・サコ氏は「日本人はコロナは外から来るものという概念を形成した」としているが、マスク着用や黙食など、日本の低い死亡率に貢献したと信じられている習慣を外国人は守れないという暗黙の論理が社会にあると同誌は指摘する。昨年末に岸田首相が渡航制限を強化したとき、日本人の9割近くが賛成したとし、外国人への不信が開国を遅らせているという見方を示した。

 イースト・アジア・フォーラムの記事も、慎重な岸田首相の対応が国民の支持を得ていると述べる。FNNと産経新聞の世論調査では政府のコロナ政策を回答者の65.4%が支持しており、ロシアのウクライナ侵攻への対応も合わさって、内閣支持率が1月以降着実に上昇していた。国内外から国境開放の要望が出ている一方で、岸田首相は以前の首相であった安倍氏や菅氏の政策に対する国内の不満を転換させるため、なんとか鎖国を利用することに成功したとしている。

◆海外からは開国ラブコール 「BA.5」でどうなる?
 エコノミスト誌は、ウイルスが再拡大しない限り参議院選後に本格的な開国になるという関係者のつぶやきを紹介していたが、現在オミクロン株の派生型「BA.5」の感染が急拡大中だ。岸田首相の判断が注目されるが、同誌は短期的な政治的利益は犠牲を伴うと警告する。日本はすでに将来の日本と外国の懸け橋になる留学生を大量に失っているし、日本のビジネスリーダーたちは鎖国により労働力不足がより深刻になることを危惧していると指摘している。

 米旅行雑誌コンデナスト・トラベラーの2021年の読者調査では、渡航できないにもかかわらず、「お気に入りの海外の都市」の上位に日本から3都市がランクインした。日本旅行の需要は衰えるどころかますます高まっているとエコノミスト誌は述べている。加えて円安の進行で絶好のチャンスを迎えているが、現在の外国人観光客に対する厳しい国境ルールではインバウンド復活は期待薄だ。

 サウスチャイナ・モーニング・ポスト紙によれば、最近ではビジネスビザで日本に来た外国人が、仕事の合間に観光をする「ブレジャー(ビジネスとレジャーを合わせた複合語)」が増えているという。彼らが観光業回復の先駆けだと読んだ東京観光財団では、「ブレジャー」キャンペーンを展開し、空き時間に散策できる都内の変わった場所情報を提供しているという。ビジネスで日本を訪れたアメリカ人女性は、短時間で見た東京だけでも素晴らしく、次は京都や富士山を観光で訪れたいと述べた。もっともウイルスがまん延するいま、日本の入国制限は誰の安全にもならず、旅行業や小売業の従事者を苦しめるだけなのではと疑問を呈している。

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Text by 山川 真智子