家畜の糞尿が大人気 肥料価格の高騰のなか農家の救世主に

厩肥を手にする農民|Brian Inganga / AP Photo

 ロシアによるウクライナ侵攻で、世界の農業部門に影響が及んでいるが、肥料価格の高騰が農家の頭を悩ませている。そこで注目されているのが、家畜の糞尿を使った肥料「厩肥(きゅうひ)」だ。これまで糞尿の処理にお金を払っていた畜産農家は、予期せぬ需要に商機を見出している。

◆価格は昨年から高騰 食糧不足悪化の懸念も
 化学肥料は生産に多くのエネルギーを必要とする。天然ガスや石炭価格の記録的高騰で肥料メーカーが減産に踏み切ったため、需給ギャップが拡大し、昨年から価格が高騰している。異常気象や新型コロナウイルスのパンデミックもサプライチェーンを揺るがした。(ロイター

 ロシアによるウクライナ侵攻で状況はさらに悪化した。ロシアとベラルーシは西側の制裁と輸送上の障害のため肥料輸出を減らしている。3月時点で、市販の肥料価格は過去最高を記録し、窒素肥料は2020年から4倍、リン酸塩と炭酸カリウムは3倍に跳ね上がったとロンドンのコンサルタント会社CRUグループは指摘している。(同)

 肥料価格の高騰でコスト増に耐えられない農家は、農地面積を減らすことを余儀なくされ、世界の食糧不足をさらに悪化させる可能性もある。

Text by 山川 真智子