「ガス購入はルーブル払い」の意味は? ロシアの思惑は外れるとの指摘も
◆憤る欧州各国 エネルギー事業者は戦々恐々
プーチン氏は、政府と中央銀行がロシア通貨への移行に関する解決策を1週間で打ち出し、ガスプロムはそれに応じて契約を変更するよう命じられるだろうと述べた(ロイター)。
ドイツのハベック経済相は、プーチン氏の発表は契約を破棄するものだと非難し、ドイツ政府はこの問題を欧州のパートナーと協議すると述べた(AP)。ポーランドの政府高官も、現在の契約に含まれる支払いルールへの違反になるとし、今年末に契約が切れた後は、ガスプロムと新しい契約を結ぶつもりはないと述べた(ロイター)。イタリアは、欧州のロシアへの制裁を弱めることになるため、ルーブル払いはしたくないと述べた(ブルームバーグ)。
もっとも、ロシアからガスを購入しているガス・電力会社にとって、ルーブル払いの要求は、論争や契約交渉に発展し、地域への円滑なエネルギー供給が妨げられる恐れがある。すでにこの冬の記録的な価格高騰に悩まされており、ドイツやイタリアのエネルギー大手はコメントを避けている。(ブルームバーグ)
◆思惑は外れる? 資源カードをさらに活用か?
一部の専門家はルーブル払いを疑問視している。コーネル大学のエスワール・プラサド教授は、ルーブル払いは西側の金融制裁を回避するための奇策だが、最終的には効果がないだろうとする。ルーブルは暴落中なので現在手に入れやすいが、ほかの通貨をルーブルに替えることは、ロシアに科せられている広範な金融制裁を考えるとかなり難しいだろうと見ている。また、ルーブル払いを要求することで、ルーブルの需要が高まりその価値が上がるという期待も、あらゆるルーブルへの下落圧力を考えれば、誤った期待だとした。(AP)
経済調査コンサルタント会社キャピタル・エコノミクスのニール・シアリング氏は、ロシアは輸入品の代金を払うために外貨を必要としており、エネルギーは残された数少ない外貨の供給源だとし、理解できる動きではないとしている。(同)
フィナンシャル・タイムズ紙(FT)によれば、ロシアの欧州向けパイプラインガスの契約は、通常ユーロ建てで、ルーブルで支払うオプションが含まれている可能性は低いとアナリストは見ている。よってルーブル払いには契約の再交渉が必要になる。ノルウェーのエネルギー調査会社ライスタッド・エナジーのヴィニシアス・ロマーノ氏は、ルーブル払いにこだわれば買い手は契約期間など契約の別の面について再検討するかもしれず、結果的にロシア産ガスからの撤退が加速する可能性もあるとしている。
コンサルタント会社エナジー・アスペクツのジェームス・ワデル氏は、今回の発表は西側との政治的対立のなか、ロシアがガス契約を危険にさらしても構わないと思っていることを示していると述べる(FT)。今後は、資源カードによるプーチン氏の逆襲のエスカレーションが懸念される。
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