ソ連時代の航路も復活? ロシア領空飛行禁止、乱れる空の旅

テッド・スティーブンス・アンカレッジ国際空港|Andrew F. Kazmierski / Shutterstock.com

◆懐かしのルート復活? コストと時間が課題
 CNNによれば、欧州からロシアを通過できない航空会社が取るルートの選択肢は2つある。1つは黒海とコーカサスを避けて南下し、中央アジアを飛行するルートだ。これはロンドンからインド、香港を通る冷戦時代のルートを少し修正したものだ。黒海からどこまで南下するかにもよるが、ロンドン-東京間の直行便より2~3時間長く飛ぶことになる。

 2つ目はロシア東部を避けグリーンランドやカナダ北部を北上して、アラスカやベーリング海峡を経由する方法だ。これは冷戦時代のイギリスから日本までのデフォルトルートで、欧州とアジアを結ぶ多くのフライトがアンカレッジで給油を行っていた。現在このルートを飛べば、最短航路と比べ3~4時間長くかかるが、航空機によってはアンカレッジに立ち寄る必要がない場合もある。

 さらに、この2つのルートを組み合わせ、往路は欧州からアジアに南下するコース、復路はアジアからアラスカ上空を東進するコースを検討しても不思議ではないと専門家は指摘する。現代では気象予報はずっと良くなっており、良い追い風が吹けば東に向かって飛ぶのが最良だと説明している。

 もっとも、運航会社は各国に上空を通過するためのオーバーフライト料を払っている。経済効率の悪いルートを飛ぶことでより多くの料金を支払うことになるかもしれないと専門家は指摘し、それが乗客や貨物輸送業者に転嫁されることが予想されるとしている。

◆過去の繁栄再び? アンカレッジに脚光
 CNBCによれば、一部の航空会社からアンカレッジ空港に燃料や施設利用の可能性についての問い合わせが来ているという。これは危機管理計画を航空会社が策定していることの表れでもあるということだ。

 アンカレッジ空港は、ソ連が領空を閉鎖していた時代に、欧州とアジアの主要都市を結ぶ中継地として利用されていた。しかしソ連時代の末期に領空が解放されたこと、また航空機の航続距離が伸びたため、乗り継ぎ地としての需要は減少した。(航空産業ニュースサイト『シンプリー・フライング』)

 現在では、世界の先進都市からほぼ9時間半の距離に納まるという地の利を生かし、アンカレッジ空港は貨物の重要空港となっている。パンデミック前の2019年では、旅客用の就航地21ヶ所に対し貨物は44ヶ所にも上っていた(同)。今後旅客便の需要が増えれば、貨物と合わせアンカレッジの黄金時代が再来するかもしれない。

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Text by 山川 真智子