世界的インフレも、なぜ日本だけ物価上昇しないのか
◆低インフレの弊害 人は動かず賃金も伸びず
海外のようなインフレ高進が日本で発生するリスクは非常に限定的だと日本銀行の黒田総裁は語ったが、問題はその結果として生じる生産や賃金の伸び悩みだとWSJは述べる。野村総合研究所の木内登英氏は、物価上昇は最も需要の強い場所や投資すべき場所を企業に知らせるためのシグナルであり、その結果、労働者はより生産性が高く、高い賃金を得られる成長中のセクターに流れ込むと説明する。日本ではこのメカニズムが機能していないという考えだ。
日本の雇用慣行も問題視されている。非正規労働者が増えたとは言いつつも、大企業では現在も終身雇用が多く、このおかげで日本はコロナ禍でも失業率が低く抑えられていた。しかし裏を返せば日本人は現在アメリカで次々と現れているような高収入の仕事に転職することはなく、収入はほぼ横ばいだ。大和証券の岩下真理氏は、コスト上昇を価格に転嫁できるビジネス風土のあるアメリカでは格差があっても賃金は上昇するのに対し、日本では人手不足でも上がらないと述べている。(WSJ)
◆抜本的対策なし 景気回復は遠い?
日本の日常的な低価格は、経済学者が「ジャパニフィケーション(日本化)」と呼ぶ低インフレ、低金利、低成長の一部だとWSJは述べる。中国政府系英字紙グローバル・タイムズは、成長していない日本の「失われた30年」は多くのエコノミストの研究対象だが、同時に絶対二の舞になってはいけない、世界への教訓だとしている。
同紙は岸田新首相が巨額の財政支出を承認したことに言及。家庭や中小企業に現金を配ることで消費喚起を狙っているが、これまでの財政刺激策はほとんど貯蓄になってしまったとして効果には懐疑的だ。そもそも人口が減少し企業競争力の低下している日本では、国が直面している構造的な制約に対処できなければ、パンデミック以前の経済規模まで回復することはできないだろうと厳しい意見だ。
エコノミスト誌は、給付された現金が実際に使われるのであればインフレを促進することになるかもしれないとする。しかしいまのところ日本はまだインフレが忘れ去られた場所のように見えるとし、ゼロインフレマインドの克服は簡単ではないと見ている。
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