なぜ日本の賃金は上がらないのか? 海外メディアの見る問題点

shutter_o / Shutterstock.com

 今年の春闘では、好調な企業業績を反映し、ベースアップ(ベア)の上げ幅が前年を越える企業が相次いだが、安倍首相が求めていた賃上げ率3%を達成できた企業は少なかった。海外メディアは、日本の賃金が思うように上がらないのは、日本独特の理由があると指摘している。

◆少子化、非正規、終身雇用。賃金抑制の原因か
 日本の失業率は1993年以来最低を記録しており、労働市場は売り手市場のはずだが、アベノミクスで女性の労働参加を促進させた結果、人口減にもかかわらず労働力人口が増えている。ブルームバーグは、これが皮肉にも全体の賃金上昇を抑制してしまった可能性があると見ている。高齢者の再雇用と同様に、多くの場合、女性は低賃金労働に従事していると指摘している。

 日本の労働市場が、正規と非正規雇用に分かれていることも理由と見られている。1990年代にバブルがはじけて以来、非正規雇用で働く人は増え、現在全体の4割近くになっている。これらの人々は正規よりも低賃金で、福利厚生も少なく、雇用の不安定だ。パート労働に限っては賃金が上昇しているが、多くの労働者の収入にまでは、この変化は浸透していない。

 日本ならではの終身雇用制度も理由だとされる。最近は転職も珍しくなくなったものの、ブルームバーグによれば、日本人の1社当たりの平均勤続年数は12年で、アメリカの4.2年に比べ圧倒的に長い。年功賃金制が取られている場合も多く、これにより全体の賃金が低く抑えられているとしている。エコノミスト誌は、硬直した日本の労働法の下では、転職するより1社に留まるほうがよいと述べ、結果的に労働者の要求は控えめになり、雇用者に有利になるとしている。よって、企業業績がよくても月給を上げず、ボーナス支給で対応するといった企業のやり方を反転させるのは、ほぼ不可能だと述べている。

Text by 山川 真智子