米国の消費ブームとサプライチェーンの混乱、何が起きているのか?

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 世界最大の小売チェーン、ウォルマートが先日発表した第3四半期の業績報告によると、米国における既存店売上高は前年同期比で9.2%上昇した。米国では新型コロナウィルスの影響を受けて、需要ブームと物流停滞の問題が起こっている。その実態とは。

◆予測上回るウォルマートの業績
 米国アーカンソー発、約50年の歴史を経て世界最大の小売チェーンとなったウォルマート。米国だけでも160万人を雇用し、グローバル全体では230万の雇用を生み出している。2021年1月期の決算では、約5592億ドルの売上高を記録した。2021年10月末時点、同社は米国内に5342店舗、国外においては5224の小売拠点を持つ(内、メキシコの小売が2675店舗)。

 11月16日にリリースされた第3四半期の業績報告書によれば、第3四半期の既存店売上高(comp sales)は前年同期比で9.2%増加。過去2年間での既存店売上高は15.6%増加した。また同時期の調整EPS(Earnings Per Share:EPS、1 株当たり利益)は1.45ドルと、アナリスト予測を上回る結果となった。FY2022通期の着地予測においては、調整EPSの予測を、前回の6.2〜6.35ドルから6.40ドルと上方修正させた。また、米国内におけるイーコマース売上は8%伸び、過去2年間では87%の伸び率を示した。海外部門についても、傘下でインドのネット通販大手フリップカートの売上高と、中国およびメキシコにおけるイーコマース売上高が大きく飛躍した。

 ウォルマートは、11月下旬の感謝祭の祝日ごろから加速する年末年始の需要ブームに備え、在庫レベルを事前に11.5%引き上げたとのことだ。予測を上回る業績は、食料品部門とイーコマースの伸び、そして消費者がインフレに直面するなか、ウォルマートは低価格を維持したことが要因のようだ。米国はパンデミックからの経済回復以降、雇用不足の問題を抱えているが、同社は先日、時間給の最低ラインを12ドルに引き上げ、ホリデーシーズンに向けて追加で15万人のスタッフを採用する計画とのこと。物流停滞の課題に対しては、自社所有の貨物船を利用し、比較的空いている港の活用と夜間作業の拡大などで対応する見込みだ。

Text by MAKI NAKATA