ベネチアングラス工房を襲うエネルギー高騰 伝統途絶えると危機感

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 1000年以上の歴史を持つイタリアのベネチアングラスの職人たちが、世界的な天然ガス価格の高騰を受け、制作を縮小・中止せざるを得なくなっている。パンデミックの影響からようやく抜け出した矢先の出来事で、このままではガラス作りの伝統自体が途絶えてしまうと懸念されている。

◆薪から天然ガスへ 品質向上に効果
 ベネチアのラグーン(潟)に浮かぶ半マイル四方のムラーノ島には、吹きガラス職人たちが集まっている。1291年にベネチア共和国が、火災が起きた際にベネチア本島の豪華な建物に火が広がることを防ぐためラグーン内のすべての窯をムラーノ島に移すよう命じたためだ。以来この島で栄えた伝統的な技術が、今日まで受け継がれている。

 ムラーノのガラス職人たちは数十年前から、仕上がりにばらつきのある薪窯からメタンガスを燃料にした窯に移行した。これにより、作品の価値を高める繊細な透明感を出すのに十分な燃焼温度を実現することができた。メタンはガラス職人が法律で使用を許可されている唯一のガスだという。(AP

Text by 山川 真智子