税収60%アップ、英企業を取り込んだエストニアの成功 ブレグジット恩恵

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◆英企業続々、ブレグジットの恩恵
 ニューヨーク・タイムズ紙(NYT)によると、e-Residencyを取得しても市民権や税務上の居住権、エストニアやほかのEU諸国への入国が認められるわけではないが、世界176ヶ国から申請が来ているという。そのなかでもロシア、ウクライナ、中国に次ぐ非EU諸国からの申請の第4位にランクされているのがイギリスだ。

 ブレグジットにより約4000社の英企業がエストニアに進出しており、そのほとんどがe-Residency制度を利用しているという。エストニアのカジャ・カラス首相は、EUへのアクセス、税制に加え、エストニアの成長著しいテックシーンとデジタルインフラが主な理由だと述べている。カラス首相は、エストニアには評価額10億ドル以上のハイテク・ユニコーン企業が7つもあると述べ、人口わずか130万人の国にはかなりの数だと述べている。(ロンドンの経済・ビジネス紙シティA.M.)。

 NYTは、英企業、とくにテクノロジー企業の流入により、イノベーションのハブとしての評価も高まっているとする。エストニアはEUに加盟したことで、国内の優秀な人材の流出に悩まされていたが、いまや頭脳流出は逆方向に進んでいるという。

 実はエストニアでは前政権時代から「イギリスの友人たち」にできるだけ有利な条件を整えようとしてきたとカラス首相は述べており、ブレグジットに備えた戦略であったことを示唆した。2020年の同時期に比べ、エストニアの税収は60%も増加しており、英企業の受け入れが明らかに貢献しているという。(シティA.M.)

 現在OECDが国際課税改革として最低税率導入を進めており、エストニアもそれに合意した。エストニア財務省は、最低税率により、税制が重要な役割を果たしている企業が去る可能性は否定できないとしている。しかし税制以外の制度の魅力は高く、企業が大量に国外流出することはないと予測している。(バルティック・タイムズ紙

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Text by 山川 真智子