税収60%アップ、英企業を取り込んだエストニアの成功 ブレグジット恩恵

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 バルト三国の一つエストニアで「e-Residency」という国家プログラムを利用した海外からの会社設立が人気だ。とくにEUを離脱したイギリスの企業が、低い税率やEU市場へのアクセスのしやすさも手伝って、エストニアに続々と集まっている。エストニアの国家ブランドの価値も高まり、小国のサクセスストーリーになっている。

◆デジタルノマドにアピール 国のイメージアップにも
 e-Residencyとは、エストニア政府が発行するデジタルIDとステータスで、同国のビジネス環境へのアクセスを提供するものだ。e-Residencyを持つ世界の起業家はEU企業としてエストニアで会社を設立することができ、どこからでもオンラインでビジネスを管理できる。

 e-Residencyプログラムは2014年12月の開始以来、約8万5000人を迎え入れた。これらの人々がエストニアで1万8000以上の企業を設立している。e-Residencyプログラムの責任者Lauri Haav氏によると、新型コロナのパンデミックで多くの国々がデジタル化するためのソリューションを模索し始めたばかりのころ、エストニアの公共サービスはすでにデジタル化されていた。コンサルティング会社Brand Finance社の今年の報告書では、国家ブランドの価値が昨年から38%も増加しており、大胆なデジタルインフラの構築が貢献したと同氏は述べている。(バルティック・タイムズ紙

◆競争力ある税制
 米シンクタンクTax Foundationの報告書では、エストニアは経済協力開発機構(OECD)加盟国のなかで、税制の競争力で8年連続1位となっている。エストニアの法人税は20%で、利益を得たときではなく、利益を配当として支払うときにのみ課税されるため、企業は利益を非課税で再投資できる。(同上)

 さらに個人所得税も競争力ある税率(20%)で簡単かつ均一に課税され、人材獲得競争が激化するなかで強みになっている。

Text by 山川 真智子