英国でCO2不足、食料品がスーパーから消える? 業界団体が警告

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◆発端は燃料価格高騰、動物愛護の問題も
 肥料工場の操業停止理由は、欧州のガス価格の高騰だ。ロシア産天然ガスの供給不足や、北海の風不足などいくつかの要因があるとエコノミスト誌は説明し、天然ガスと風力への依存度が高い国が大きな影響を受けているとしている。イギリスはエネルギーの約40%を天然ガス、20%を風力で賄っており、もっとも大きな打撃を受けている。先日の天然ガス卸売価格は、8月初めと比較して7割も値上がりした。

 CO2不足でとりわけ困っているのが食肉業界だ。イギリスでは人道的な観点から、家畜を苦しまずに死なせるため、二酸化炭素ガスを用いて意識を失わせてから屠殺している。英食肉加工者協会のニック・アレン氏によると、豚や家禽の80%がこの方法で処理されており、このままでは出荷せず農場に留め置くしかないという(英ヤフーニュース)。

 屠殺場を運営する2社は、貯蔵しているCO2の量は残りわずかだとガーディアン紙に話している。電気で家畜を気絶させることも可能だが、動物に苦痛を与える方法であり、ほとんどの経営者は使用できないと考えているという。アレン氏によれば、現在豚肉、鶏肉の在庫は5~15日分しかなく、このまま肥料工場の操業再開がなければ、2週間後には消費者への影響は避けられないということだ。(ヤフーニュース)

◆全国規模の品不足も 業界団体が政府に警告
 食品製造から小売業まで、CO2不足は食品サプライチェーンに深刻な混乱をもたらすと業界団体は警告し、肥料工場への補助を政府に要請した。状況は悪化しており、政府の介入なしではCO2の追加供給の見通しは立たないとしている。労働力不足も問題化するなか、CO2不足で生産が止まるようなことがあれば、需要の増えるクリスマスシーズンを前に業界は重大な転換点に立たされ、国中で品不足が起こる危険性があると関係者は話している。(ガーディアン紙)

 BBCによれば、政府は停止中の2つの肥料工場を再開するための取引を行ったと発表した。工場を所有する企業に政府がどのような後押しを約束したのかは、まだ明らかにされていない。工場の生産再開までに3日はかかるとされており、依然として食品や飲料の供給にさらなる混乱が生じる可能性があるという。

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Text by 山川 真智子