米国の人手不足の背景 失業給付とホスピタリティ業界の課題

Nam Y. Huh / AP Photo

◆求人数の増加と人手不足
 8月に発表されたデータによると、6月最終営業日時点で米国の求人数は統計開始以来の最高値1010万を記録した。求人数のデータは、過去4ヶ月間連続で最高値を記録し続けている。また、同じく8月に発表された最新の雇用状況の報告によると、2021年7月時点の雇用数はおよそ1億4700万。昨年中旬以降の伸び率は緩やかだが、パンデミック前の1億5000万台に近づいている。7月の失業率は5.4%。減少傾向にあるが、パンデミック前の2020年2月時点の3.5%よりも高い数字だ。レジャー・ホスピタリティ業界における雇用も回復しつつあるが、2020年2月と比較すると170万人(10.3%)少ない数字となっている。

 ホスピタリティ業界の現場は、新規採用に苦戦しているようだ。レストランの激戦区であるニューヨーク市などの場合、シェフの求人をかければ通常は60〜80の応募があるが、現在は応募すら集まらない状況だという。人手不足の状況は、1店舗しかないようなレストランだけでなく、大手チェーンにおいても同様の状況だ。求人サイトによると、パンデミック以前は12万以上がウェイターの求人を探していたが、同じ求職者をトラッキングすると、「データ入力」や「リモート」といったキーワードの検索が急増している。(CNN

 ニューヨーク・タイムズの看板ポッドキャスト「ザ・デイリー(The Daily)」でも、ホスピタリティ業界の求人に応募が集まらない状況に関して、雇用者と労働者のストーリーを紹介している。たとえば、テキサス州でハンバーガー店とケータリングの事業を手がけるオーナー・シェフによると、通常であれば一つの求人ポジションに対して、簡単に100件ほどの応募があるのに対して、現在は1、2件の応募しかないという状況だという。パンデミック下における健康リスクと拡充された失業保険、そして、レストラン業界を含むホスピタリティ業界における時給の低さと労働環境を天秤にかけた上での人々の判断が、こうした応募不足の状況に反映されているとオーナーは理解している。一方、労働者側の視点としては、業界の時給の低さや労働環境に加え、託児サービスの利用や健康保険の支払いなど、就職した方がコストが増えるという懸念があるようだ。

 パンデミックの特例が追加された失業保険の存在は、一時的に労働者のインセンティブを削ぐ要因となっている可能性はあるが、人手不足の解決には、とくにホスピタリティ業界における雇用環境の改善が必要だ。具体的な項目としては、賃金の値上げ、労働環境の改善、勤務時間・スケジュールの柔軟性の向上にワーク・ライフ・バランスの改善、子供や高齢者など、ケアが必要な人員を抱える家族に対する支援などが指摘されている。本質的な課題が解決されなければ、連邦政府の特例による失業保険が終了する予定の9月以降も、人手不足の問題が継続することが予測される。

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Text by MAKI NAKATA