東京五輪の巨額損失、日本経済への影響は?
◆予算膨張で当初の3倍、収入はコロナで見込めず
日本政府の多大な期待を背負って準備された五輪には莫大な投資がなされた。東京五輪の予算は154億ドル(約1兆7000億円)とされているが、会計検査院によれば、総支出額は200億ドルを超えており、五輪招致のときの予算から3倍にもなっているとウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)は指摘している。
そもそも五輪の予算は不確定要素が多く、1960年以降、大幅なコストオーバーになるのが慣例だとWSJは述べる。大会の費用超過による経済的影響は長期に渡って続く可能性があり、1976年のモントリオール大会では超過支出により発生した負債返済に30年かかった。2004年のアテネ大会の負債は、その後に起きた金融・経済危機を悪化させた。東京大会の場合は、史上最高額の五輪となっているにもかかわらず無観客試合や海外からの観光客が来ないことで低収入となり、WSJが言うように経済的には大失敗なのは明らかだ。
◆損失は少ない? 経済の今後はコロナ次第
もっとも、これまでの投資は五輪後に生きるという見方もある。投資サイト『インスティテューショナル・インベスター』は、五輪の開催はその後の観光や経済をけん引すると指摘。五輪が国際的に放映されることで、世界中にその都市や文化、国そのものについてのこれまで知られなかった情報が広がるとし、開催後の観光客増加につながるとしている。
野村総合研究所のエコノミスト、木内登英氏も、コロナ後に観光客が訪れる可能性があることから、まだ潜在的な利益があるとし、飲食店やホテルなどが投資した外国人用の改装費用も無駄にならないと説明している。新しく作った施設も最終的には別のイベントに有観客で使用されるだろうと述べており、大会による損失は最悪に見積もっても日本の経済規模の1%にも満たないと指摘している。(WSJ)
インスティテューショナル・インベスターは、緊急事態宣言下の五輪は株式市場にとってマイナスかもしれないが、新型コロナ感染を拡大させることなく無事に終えられるのであれば、むしろ今後はプラスになるのかもしれないとしている。WSJも、最大の経済リスクは五輪が新型コロナのスーパースプレッダーイベントとなる可能性だとし、そうなれば景気回復への道のりはさらに長くなり、支出もずっと増えるだろうとしている。
五輪で日本はメダルラッシュに沸いているが、29日の東京の新規感染者数は過去最多の3865人と増え続けている。感染抑制は困難で、五輪を終えた後が日本の正念場となりそうだ。
【関連記事】
「五輪無観客」の衝撃、海外にも 米テレビ局は演出に苦慮か
東京五輪の開催費、過去最高に 英オックスフォード大の調査
「日本経済発展の起爆剤」東京五輪から50年 現代に生きる“遺産”に海外注目
- 1
- 2