「五輪無観客」の衝撃、海外にも 米テレビ局は演出に苦慮か

Shuji Kajiyama / AP Photo

◆スポンサーもがっかり もはや五輪は負のイメージ
 無観客開催は、スポンサー企業にとっても大きな失望となっている。そもそもぎりぎりまで何も決まらず、観客の有無の決定も遅れたことで、日本の五輪スポンサーの間には不満が広がっていたとロイターは述べる。無観客が濃厚だとわかってすぐ、スポンサー企業は正式な決定を待たずにアクションを取り始めたということだ。

 いくつかの企業は、すでに青海・台場地区と有明地区をつなぐオリンピック・プロムナードでのプロモーションブースの設営をやめていた。顧客用にプライベートカーやラウンジで有名人を招いたパーティを企画していた企業は6月までに、五輪チケットにホテル滞在やギフトをつけるプランに規模を縮小していたという。しかし、いまでは計画のさらなる縮小や中止を迫られている。(ロイター)

 フィナンシャル・タイムズ紙によれば、五輪があまりにも不人気なため、多くのスポンサー企業がブランド・イメージの毀損につながるのではないかと恐れている。すでに五輪への言及を最小限に抑えるという選択肢を検討する企業さえあるという。そのうえ無観客となれば、スポンサーだけが観戦できるという「不公平さ」を大衆が感じるのではという心配もあり、自社の幹部がスタジアムにいる姿がテレビに映し出されるのを危惧する企業もあるということだ(ロイター)。

◆サクラも検討した? 薄いライブ感にNBCも苦慮
 東京五輪の放映権を持ち、史上最高額の12億ドル(約1320億円)超の収益を得るとされる米NBCも、無観客開催によって影響を受けることは必至だ。11回のオリンピック放送に関わったスポーツキャスターのボブ・コスタス氏は、ファンから発せられる雰囲気やエネルギーがオリンピックの重要な要素だとし、競技のみでは視聴率に影響するとしている(CNN)。

 ハリウッド・レポーター誌によれば、実はNBCは、観客数が制限される場合は在日米軍関係者を動員して米チームへの歓声を演出することまで考えていたが、無観客でその案は消えたという。CNNは、NBCが人工的な観客の声を導入するかどうかは不明としているが、これまでもほかのスポーツで採用されており、可能性はあるとしている。もっともコスタス氏は、質の悪い歓声は逆効果になるだけに微妙だと述べる。オリンピックには特別な雰囲気や質感があるため、視聴者に嘘をつくことはできないと同氏は述べており、NBCの対応が注目される。

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Text by 山川 真智子