なぜ日本メーカーはEVに消極的? 取り残されるのでは? 疑問の海外メディア

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◆日本はEVシフトに懐疑的 トヨタは多様な選択を重視
 日本政府は、ガソリン車の販売を2035年までに禁止すると発表したが、ハイブリッドは重要なテクノロジーとし、除外しない方針だという。NYTは、日本の政府と自動車産業は、少なくとも短期的、中期的には、EVの収益性と環境優位性には懐疑的だとしている。

 トヨタ自動車の豊田章男社長は、EVシフトに邁進できない日本独特の理由を説明している。まず再エネや原子力による発電が多い欧米とは違い、日本は7割以上が火力発電だと指摘。カーボンニュートラルの観点から、EVは日本より他国で生産したほうが良いことになってしまうと述べる。これは国のエネルギー政策の問題で、自動車業界だけでは解決できない課題だとしている。また、自動車全部をEVに置き換えれば、夏場の電力不足を引き起こし、インフラ投資、住宅のアンペア増設などにも莫大なコストがかかるとも述べる。結論として、HV、PHV、EV、FCVなど各種電動車のミックスが日本に合った選択だとしている。(トヨタイムズ

 トヨタは北米で電気自動車を今年投入する予定だが、海外でもEVのみが脱炭素に最良とは考えておらず、ハイブリッドとの両立を目指している。トヨタのチーフ・サイエンティスト、ギル・プラット氏は、乗る人の条件やニーズにより、解決策は異なるはずだと説明している。北米の営業部長、ボブ・カーター氏は、トヨタは長期のEVトレンドを無視しているわけではなく、多様な選択を用意し、消費者に最適な車を選んでもらうというゴールに向かっているとしている。(Automotive News)

◆欧州で補助金パワー炸裂 今後の縮小を憂慮
 ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)によれば、現在欧州では記録的なペースでEV購入が増えているという。欧州では、脱炭素に加え景気回復策の一つとして、ハイブリッドも含めEV購入に補助金や税制優遇措置が設けられており、これが追い風となって各社がEV投入を進めている。もともとEVは巨額投資をしてまで開発を進めるほどの市場ではない、と見ていた業界の認識がすっかり変わってしまったという。

 しかし長期的に見れば、好調なセールスが続くかどうかはわからないという。中国では、欧州と同様に補助金をつけることでEVのセールスが伸びたが、補助金を大幅にカットした後に減少した。パンデミックも影響して、「2025年までに新車販売の20%をEVにする」という目標は無理ではないかと見られている。(同)

 欧州の多くの国では補助金は年末に終了予定で、中国の二の舞になることが心配されている。自動車メーカーは短期的な現象で終わらせないために、充電ステーションなどインフラの整備、バッテリー工場建設へのサポート、二酸化炭素排出への課税など、EV市場が自立できるための政府の援助を期待している。(同)

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Text by 山川 真智子