新型コロナ復興の鍵? 米で「ベーシックインカム」論争が再燃

Frank Franklin II / AP Photo

◆全米17市長がベーシック・インカム支給に賛同
「ベーシック・インカム」とは、政府が市民に一定の金額を支給して最低限の生活を保障する制度だ。経済サイト『マーケットウォッチ』によると、ヤン氏は一定所得以下の成人1人につき1000ドル(約10万7000円)を無条件で支給することを提案した。社会主義的な印象の強いベーシックインカムのコンセプトをこのとき初めて耳にしたアメリカ人も多かっただろう。耳慣れないこのコンセプトに、多くの人々が「無償の収入なんてあり得ない」と考えたはずだ。

 しかし、いざ新型コロナウイルスで経済危機に直面してみると、週600ドルの給付金や政府からの無利子ローンに生活やビジネスの存続を助けられた人々は多く、政府から支給される給付金は無駄ではなく、経済活性化に大いに役立っていることが証明された。この点から、ベーシック・インカムの経済効果にスポットライトが当たったというわけである。

 カリフォルニア州ストックトンでは、実際にこのベーシック・インカムのテストランを行っている。情報サイト『VOX』によると、同市のマイケル・タブス市長は、同市内に住む低所得者130人に月500ドル(約5万3000円)を支給するパイロットプログラムを2019年より実施している。同記事によると、タブス市長が2018年に開催された全米市長会議でこのプログラムを提案したところ多くの賛同を得たという。前出のマーケットウォッチ記事によると、現在はストックトンをはじめ、ロサンゼルスやオークランド、シアトルなど、ベーシック・インカムに賛同する全米17都市の市長(全員民主党)が「メイヤーズ・フォー・ギャランティード・インカム(Mayors for Guaranteed Income)」という組織を結成している。

 ベーシック・インカム構想実現にはまだ遠い可能性もあるが、11月の大統領選でバイデン前副大統領が当選し、上院でも過半数を得ることができれば、実現の可能性はないとは限らない。とりあえずいま、米議会では週400ドルというトランプ大統領の大統領令を土台にして、失業者に対する給付金をいつ、どのように支給するかについて合意することが先決だろう。

Text by 川島 実佳