クルーズ船の悪夢再び 営業再開も感染者 運休で破産も

ノルウェー・トロムソに停泊中のロアール・アムンセン号|Terje Pedersen / NTB scanpix via AP

 もう一隻は、ノルウェー、トロムソに待機中のフッティルーテン社のロアール・アムンセン号。同船では8月2日の時点で、少なくとも乗客、乗組員のうち40名のCovid-19陽性が確認されている(アル・アラビア紙、8/2)。内訳は乗組員が36名、乗客が4名。まずいことに、感染者の存在が明らかになる前にすでに乗客178人が下船していたため、20 minutes紙(8/3)によると、現在ノルウェーは下船客に自己隔離のうえ、感染テストを受けるようにと、呼びかけている。また、ロアールアムンセン号が同じ乗組員で7月17~24日に行ったクルーズの乗客のひとりも新型コロナウイルスに感染していたことが後から判明したためノルウェー衛生当局は残りの乗客の足取りを追うよう69の自治体に通知した。

◆急成長中だったクルーズ業界
 世界的に3ヶ月の休業を余儀なくされたクルーズ船業界は、すでに大きな打撃を被っている。一国に限っての数値だが、CLIAフランス代表エシュナ氏によれば、「3ヶ月の活動の不在は、フランス経済にとって8億6900万ユーロの損失」(フランス・アンフォ)になるという。フランス・アンフォによると、フランスのクルーズ業は年間約36億ユーロの収益を上げ、約2万人の直接的・間接的雇用者に加え造船関連の雇用者9000人を支える業界なのだ。

 パンデミック以前、クルーズ業は世界的に大きな成長の過程にあった。海事ニュース専門サイト『メール・エ・マリン』(5/6)によれば、世界のクルーズ船利用客数は、2004年から2010年の間に1300万人から1900万人に増え、2020年には3000万人と見込まれていた。記事によると、2018年にはその経済的影響は1500億ドルにのぼり、直接・間接合わせて120万人近い雇用を保障する規模を成していた。さらに2028年までにクルーズ船利用客数4千万人に達することを目標とし、これに沿うよう2027年までの受け取りで118隻の船を注文していた。金額で言えば、700億ドル近い投資である。

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Text by 冠ゆき