大量廃棄される生ビール コロナ封鎖に泣く米ビール業界

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◆捨てることも困難 満タンの樽は要回収
 ニューヨーク・タイムズ紙(NYT)によれば、酒店や食料品店での缶ビール、瓶ビールのセールスは増加している。しかし飲食店やイベントに頼っていた中小のクラフトビールなどの生産者にとって、缶、瓶ビールへの切り替えは容易ではない。結局売れ残ったビールを廃棄するところも多いという。しかし、環境規制がありそのまま捨てることはできない。大量のビールを排水溝に流したり川に捨てたりするとpHバランスが崩れ、水中の酸素が減り、望ましくないバクテリアを増やしてしまうからだ(WSJ)。

 さらに樽生ビールの生産者や卸売業者は、何万件もの飲食店からビール樽を回収する必要がある。空の樽を回収するのに比べ3倍のトラックが必要になるということだ。ビール樽の価格は一樽100~120ドル(約1万700円~1万2900円)ということで、生産者や樽を保有する会社は、破産手続きに入る可能性も考えて、早めに回収したいと考えているという(WSJ)。

 酒店よりもバーなどに依存している中小生産者の業界団体の幹部は、店を閉じた飲食店が再開することはないのではないかと危機感を表している。また、ビールが売れる夏場になっても、メジャーリーグは開催延期、欧州サッカーも停止で、夏の東京五輪も行われない。飲食店が再開しても、需要は低迷すると見られ、生産者や卸売業者にとって、非常に厳しい状況だ(同上)。

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Text by 山川 真智子