「最もポテンシャルのある観光市場」1位に日本 英調査会社

Ivan Marjanovic / Shutterstock.com

♦︎W杯・オリンピック効果
 同社は日本がスコアを伸ばした要因として、2019年のラグビーW杯、および2020年の東京オリンピックが影響していると見る。これらのイベントは観光インフラの整備を促進するほか、海外から多数の旅行客を呼び込む要因となる。

 同社アナリストのジョナサン・ヴァンデスクウィル氏は「社会経済および観光産業についての多くの要因をグローバル・データが分析したところ、100点満点中72.6のスコアで日本がトップとなった。日本は今年のオリンピックなど注目度の高いイベントの開催を予定しており、現状でもすでに優れている旅行と観光のインフラをさらに改善することで恩恵を受けるだろう」と述べている。

 旅行業界向け情報サイトの米トラベル・パルスも同アナリストのコメントを引用しながら、日本が最も可能性を秘めた観光市場に選ばれたというニュースを伝えている。ちなみに日本以外の市場では、スペイン、オーストラリア、イギリスなどが、魅力度、利便性、ビジネス環境などが評価され高い格付けを得ている。これらの市場は観光産業への公共投資が拡充すればそのポテンシャルを発揮すると同アナリストはコメントしており、すでに東京オリンピックで公共投資が確実視されている日本が優位に立ったことがうかがわれる。

♦︎訪日客、毎年2桁パーセントの伸び
 日本の旅行市場は実際に盛り上がりを見せており、2019年には過去最多となる3100万人の訪日旅行客を迎えている。データは国土交通省所管の独立行政法人である国際観光振興機構(JNTO)がまとめたものだ。一例としてアメリカからの旅行者も好調で、JNTOの伊勢尚史ニューヨーク事務所長は同機構のサイトに「米国からの訪日観光客数は、(中略)近年、毎年2桁パーセントの伸びを見せており、2014年度以降、過去最高を更新し続けています」とのメッセージを寄せ、盛況を喜んでいる。さらにトラベル・パルス誌の別記事では同事務局長のコメントを掲載し、2019年のアメリカからの訪日客の数が前年比13%の伸びを記録したと説明している。ニューヨーク・タイムズ紙が「52の旅行先」リストに挙げた東京だけでなく、ナショナル・ジオグラフィック誌が2020年のベストな旅行先に選んだ東北や、旅行関連誌コンデナスト・トラベラーズが2020年の旅先ベスト20に挙げた沖縄など、国の随所に価値ある見所が散りばめられていると伊勢氏は力説する。

 グローバル・データはイベントによる集客を長年試みながらも今回58.1点のスコアに終わってしまった国として、アラブ首長国連邦を挙げている。同国はインフラの整備に力を入れているが、複数の周遊先を持たず、局所的な開発に留まっていることが低スコアの原因となっているようだ。比較して日本は前述のように観光地が各地に存在するほか、東京から飛騨高山・京都・大阪などを巡る「ゴールデンルート」と呼ばれる周遊コースも確立しているため、旅行先としてより高い価値が期待される。

 オリンピック閉幕後も観光需要を維持するため、JNTOは昨年末、新たな施策を打ち出している。訪日客誘致のため「Your Japan 2020」と銘打ったキャンペーンを展開し、国・地方・民間から観光資源を活用したプログラムを募集、2020年末まで通年、特設サイトで情報公開を行うという。スノーアクティビティからアート、郷土食まで幅広いジャンルのプログラムを揃え、オリンピック期間以外の集客を強化したい考えだ。

Text by 青葉やまと