アジアでマスク需要急増 中国で深刻な品薄、工場フル稼働 新型肺炎

Chinatopix via AP

◆メーカー増産、工場もフル稼働
 マスクの品薄はやはり中国で深刻だ。マスク製造を行う中国企業Lanhineの総支配人Cao Jun氏は、マスク不足は世間が思うよりもっと深刻だとロイターに話す。武漢のみならず、全国の病院でマスクが不足しているということだ。同社は1日に通常40万枚の生産をしているが、顧客からは1日に計2億枚の注文が来ているという。20人強のスタッフで24時間体制、賃金4倍で生産に対応しており、2月からは200人態勢でフル稼働の予定だという。別企業のCMマスクも、旧正月前に在庫切れとなっていたが、賃金を3倍にし、朝8時から夜9時まで稼働させて増産を行うとしている。

 1月4週目のマスクの売上が前の週の3倍に伸びたという日本のアイリスオーヤマも、中国にある工場の一つで、春節休暇を早く切り上げ仕事に復帰するよう従業員に要請したということだ(AP)。

◆すでにマスクは当たり前 実際の効果は?
 新型ウイルス感染の拡大で、アジアの株式市場は打撃を受けており、投資家は長期にわたる影響を心配している。そんななか断トツで絶好調なのが日本のマスクメーカー、川本産業だとソーシャルメディアで話題になっている。同社の株は年始以来4倍(1月29日時点で5倍)になった、とザ・ウィーク誌は述べ、ウイルスへの恐怖がエスカレートしていることを示す例だとしている。

 APは、これまでマスク着用は風邪やインフルエンザ予防が目的で使われてきた日本と、大気汚染対策で使われていた中国で多く見られたが、新型ウイルス感染の拡大によってアジアのニューノーマルになったと述べる。

 一方、科学誌ニュー・サイエンティストはマスクがあれば安心という考えに疑問符をつけている。一般によく使われるのは医療用のマスクだが、これは液体のしずくを遮断し他人からの感染を防ぐもので、空気中のウイルスから完全に保護することはできない。鼻と口を完全にカバ-できないうえ、目からウイルスが侵入する可能性もあるため、感染の可能性はなくならないとしている。

 より保護力があるのは鼻や口から小さな粒子が侵入するのを95%防ぐとされるN95マスクだが、適切にぴったり着用することが条件で、子供や顔に髭などの毛がある人には向かないとされる。また、呼吸がしにくいため、すでに咳や息切れといった症状が出ている人にはかえって危険ということだ。同誌は、最善の予防は人混みを避け、手洗いの習慣をつけることだとしている。

Text by 山川 真智子