米中摩擦でカナダにロブスター・バブル 中国向け輸出が急増

marla dawn studio / Shutterstock.com

◆予想以上の大特需 業者もパンク寸前?
 実際のところ、これまでアメリカと分け合ってきた中国への供給をカナダだけで満たすのは大変だという。2018年年末のAPの記事によれば、国内や欧州、ほかのアジア向けに加え、中国の需要があまりに大きくなったため、カナダはアメリカからロブスターを輸入していたほどだ。

 さらに、物流の問題も深刻だ。輸出に使用されるハリファックス空港では、中国向け輸送は2018年7月以来2倍になっているが、スペースの確保ができず、輸送会社は毎日のように顧客に断りを入れざるを得ない状況だという。

 もっとも、この先を楽観視すべきではないという関係者も多い。アーヴィン氏は、貿易戦争はいずれ終結するとし、中国だけに頼りすぎてはいけないと述べている。輸出業者のなかにも、トランプ政権が終わり、関税がなくなれば、輸出は減速するという冷めた見方もある(WP)。

                                                                                                                 

◆メイン州は苦悩、貿易戦争後も不安
 一方、これまで中国輸出に投資してきたメイン州のロブスター関係者は危機感を募らせる。ロブスターの卸業者は、追加関税が始まって中国ビジネスの8割が吹き飛んだとWPに話す。中国の代わりに、東南アジアや国内への供給を増やそうとしているが、インフラや輸送設備が整わない市場への販売は厳しいようだ。

 中国との協議を進めるトランプ政権は、第一段階として一部の追加関税を取り下げるとされているが、ロブスターの関税には影響しないと見られている。貿易戦争が長引けば長引くほど、カナダ産の市場支配が強まり、メイン州のロブスター輸出が元に戻る可能性は低くなると卸業者は話し、自力では解決できないもどかしさを表している(WP)。

◆資源枯渇か? 温暖化も追い打ち
 WPによれば、追加関税が賦課される前の2018年前半の米産ロブスターの中国向け出荷は、前年比で120%増となっていた。メイン州のロブスターの漁獲量は1990年ごろから急激に伸びており、毎年のように豊漁となっている。しかし、メイン大学などが行った調査では、今後5年の間に主要な漁場での漁獲量は90%減少すると予測されている。これは、温暖化によりメイン湾の水温が上昇し、ロブスターの生育に影響するためだ(地元紙ポートランド・プレス・ヘラルド)。

 この予測が当たれば、5年後にはロブスターはほとんど取れなくなるということだ。メイン州でのロブスター産業の経済貢献は年間10億ドル(約1080億円)で、GDPの少なくとも1.6%にあたる。関連産業も含めれば、さらに大きくなるだけに、資源の枯渇は関税よりも打撃となりそうだ。

Text by 山川 真智子