貿易戦争で苦境、米の大豆農家 終わらぬ痛み、揺らぐトランプ氏への信頼

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◆揺らぐ大統領への信頼 傷つく農家のプライド
 貿易戦争のあおりを食らっているにもかかわらず、実は多くの農家がトランプ大統領を支持してきた。中国は平等な貿易相手国ではない、という大統領の考えに共感する農家は多く、長期的な利益のために短期の痛みに耐えるべきという考えだという(NBC)。政権側も、中国の関税の標的となり得る農家に対し、150億ドル(約1.6兆円)の補助金を出すとしており、支持基盤に配慮する姿勢を見せている。実は昨年も120億ドル(約1.3兆円)の緊急援助が行われており、60%は大豆農家に支払われた。

 その一方で、一部の熱心な支持者の間では、トランプ大統領の交渉術への信頼は弱まりつつあるようだ。彼らは大統領が頑張っているのは認めるが、大豆やトウモロコシの価格が下がり続けていることに不安を感じている。自由貿易は必要で、開かれた市場なしでは農業コミュニティはどんどん衰退してしまうという考えだ。米農務省によれば、2007年から2017年の10年間で、消えていった農場の数は16万に及んでいる。

 全米大豆協会の副会長、ビル・ゴードン氏は、農家は補助金など欲しくはなく、作物を育ててそれに見合う正当な報酬を得たいのだとフィナンシャル・タイムズ紙(FT)に述べる。競争を望む農家のプライドもまた、貿易戦争で傷ついているようだ。

                                                                                                                 

◆余剰大豆で途上国支援? 援助は思った以上に複雑
 農家を助けるもう一つの手段として、トランプ大統領は、中国製品の関税引き上げで得た利益で大豆などの米国内の余剰農産物を買い上げ、「飢える国々」に人道援助として送ると述べている。しかしこれに対してはかなりの批判がある。

 FTによれば、2020年夏にはアメリカの大豆の在庫は2640万トンになると推測されている。よって海外に寄付するだけでは、これだけの大量の余剰在庫を解消することは困難だ。また、アメリカで生産されている黄大豆のほとんどは飼料や植物油用だ。これらを貧しい国に寄付しても、大きな需要があるのか疑問視されている。

 さらに、食糧援助の場合には、できるだけ地元や近隣地域から購入するという国際規約がある。また輸出のライバル国からは、人道援助と称し、WTOで禁じられた輸出奨励金とみなされる恐れもある(FT)。カナダのマリークロード・ビボー農業相は、途上国に商品を投下するのは簡単そうに見えるが、市場をゆがめることにもなり、正しい方法ではないとしている(ロイター)。

 中国は南米などから大豆を買い付ける余地もあるうえ、アフリカ豚コレラの発生で飼料用の大豆の需要が減少しているという。中国という大口顧客を失った大豆農家にとってはしばらく厳しい状況が続きそうだ。

Text by 山川 真智子

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