首都をゼロから作る、エジプトの一大プロジェクト 同国初のスマート・シティに

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◆エジプト初のスマート・シティ
 人口の増加に直面するエジプト政府は、第四世代都市と呼ばれる大都市を複数構築する計画を持つ。エジプト・トゥデイ紙は、新首都も含め、ギザの新地区や新ルクソールなど、20の都市を第四世代都市として開拓予定だと報じている。

 なかでも新首都は、エジプト初のスマート・シティになると見られている。当局に自動通報する火災報知器のほか、スマート交通管制システムなどを導入する。科学技術を教えるキャンパスも備え、エジプトで最もハイテクな都市になる予定だ。都市内にはアフリカで最も高いタワーの建設も予定されている。

 しかし、理想的な都市になるとは限らない。スマート・シティを売りにする新首都だが、その実態はまるでディストピアのようだ、とガーディアン紙は論評している。計画のスポークスマンは、スマートシティとは安全な街だと定義しており、カメラとセンサー類をいたるところに配置し、コントロール・センターから街のすべてを集中管理する計画だ。大使館の移転も計画の要の一つだが、同紙の調査によると、多くの国の大使館は移転に乗り気でないという。テクノロジーを売りにした新首都が広く受け入れられるかは不透明だ。

◆一般的な市民は住めない街に?
 さらに、過去の首都移転の失敗例をなぞるとの指摘もある。ゼロからの首都開発を決行した国と地域は現在までに30以上あり、ブラジル、オーストラリア、カザフスタンなどが代表例だ。マンチェスター大学で都市計画を教えるニューノ・ピント教授と同大学博士課程のアヤ・バダウィ氏は、カンバセーションへの寄稿を通じ、メガ・プロジェクトの失敗の可能性を警告している。

 1950年代にブラジルで首都をリオからブラジリアに移転した際は、進歩の象徴という理想に反し、都市内外の分離と不平等が問題となった。都市を設計した建築家ルシオ・コスタの理想は、社会階級が異なる多くの人々がこの都市に住むことであった。しかし、実際には政府が4度にわたり計画を変更し、貧困層を遠く離れた衛星都市に追いやったと同誌の記事は指摘している。カイロでも過去に富裕層と貧困層の居住地の分離が起きており、新首都もこれと同じ轍を踏むのではと記事は予想する。

 ガーディアン紙によると、新首都の住宅はすでに平均的な国民の手の届かない価格になっている。エジプトの平均収入は週当たり1154エジプト・ポンド(約7000円)ほどだが、マンション一室の販売価格は約4万5000ポンド(約630万円)にも達する。平均的なエジプト人の購買能力をはるかに超えており、中国で問題となっているゴースト・タウンの後追いとなる危険もあると同紙は懸念している。革新的な首都移転計画だが、先行きは不透明だ。

Text by 青葉やまと