南アフリカにおけるインパクト投資 拡大のための課題とは

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◆投資決定者の教育
 投資決定権を持つ年金基金や資産運用者によるインパクト投資への理解が浅いと指摘されている。これは南アフリカ特有の問題ではなく、米国などでも指摘されている問題だ。

 南アフリカ政府職員年金基金(GEPF)は現時点で1.6兆ランド(約12.5兆円)の運用資産の約5%を「開発的」な資産に投資しているという。南アフリカインパクト投資フォーラムでパネリストとして参加したGEPFの投資・数理ヘッドのリンダ・マテザ氏は、資産運用者から見たインパクト投資の課題点を3つ挙げている。一つ目はインパクト投資案件が限られていること、二つ目はインパクト投資が全体的にみて難しい投資クラスであること、三つ目にはインパクト投資機会を評価する能力が欠けていることだ。

 そんななかで南アフリカにもインパクト投資の成功例はいくつかあり、それらの案件をケーススタディーとして広めることも重要だろう。南アフリカインパクト投資フォーラムでは、公共交通機関として使われるミニバスタクシー業界を支援するSA Taxi、低所得者層向けの住宅開発業者に投資するTUFHの事例が挙げられた。

                                                                                                                 

◆新規投資案件の開拓
 投資家は投資案件が見つからず、起業家は投資家が見つからない、というのは南アフリカだけでの問題ではない。従来のリスクリターンの考えには問題があり、社会インパクトを利点として見る必要がある。

 南アフリカインパクト投資フォーラムのパネリストで年金基金の受託者を務めているマバト・セーイソ氏は、投資機会を待つのではなく協力する大切さについて述べた。また、年金基金が年金受給者の声を聞いていないことを指摘した。年金受給者にとって投資リターンよりも「退職した後に、生活の質はどうなのか」という不安が多いと語った。

 年金基金がインパクト投資などのオルタナティブ投資を拡大する上でリスクを十分考える必要がある。同時に貧困問題が根強い南アフリカにおいて、インパクト投資は年金受給者の価値観を投資決定に繋げる機会となりえる。

 南アフリカにおいてインパクト投資がいわゆるtipping point(転換点)に達するにはいまだ多くの課題点が残る。南アフリカインパクト投資フォーラムの出席者の顔触れを見ても、インパクト投資業界は数年前と比べて勢いを得ている。今後の成長に期待したい。

Text by 中川沙和