移民による経済効果を得るのは? 競い合う国際社会
著:Melissa Tandiwe Myambo(ウィットウォータースランド大学、Research Associate)
政治家やメディアは、移民排斥主義者や人民主義者、排外的なレトリックを用い、移民の是非について並々ならぬ情熱を費やして議論している。2017年時点でわずか3.4%の人々が、母国を離れて違う国に移住しているにもかかわらずだ。これは100人につきたった3人の割合である。
米国のトランプ大統領や、イギリスのEU離脱を支持した人々(”Brexiteers”)の意見は、自国の経済を守るため、いかなる犠牲を払ってでも移民を受け入れるべきではないというものだ。しかし多くの学者が、グローバル化が進む世界で移民を惹きつけ留めておくことは経済の発展に欠かせないと主張してきた。この主張を積極的にに受け入れ、移民が国内経済にもたらしてくれる利益を歓迎する国もある。アフリカの国々など、はるかに立ち遅れている国もある。
発展途上国の多くは移民を送り出す国となっており、そのことが悪影響を及ぼしているかもしれない。2017年には、全移民のうち74%が生産年齢であった。このように重要な層を失うことで、国の経済に悪影響が与えられる可能性があるということは想像に難くない。同時に、こうした労働者を受け入れることで他の国の経済が発展することも。歴史上にも、これを裏付ける例がある。19世紀に、米国のように移民を受け入れた国家は、イタリアやアイルランドのように移民を送り出した国家よりも急速に発展した。なぜなら、移住先の国家では労働力が増強され、移住元の国家では労働力が減少したからである。
移民に関する筆者の研究によると、ベトナム、インド、中国といった国家では、自国の経済を発展させるため、本人や先祖が生まれた地域を離れて住む移民を雇うことに積極的だ。
筆者の研究は国境を越えた移民に焦点を当てている。「発展途上の」経済圏から「発展した」経済圏への人や技術、発想や資本の流れを意味する。彼らの中でも、ある国で生まれ育った後その国をしばらく離れていたが、今では母国に戻りたいと希望している移民が増えている。かつて研究者たちは、いったん西洋に移住した移民は子孫ともどもその国に留まるのだと考えていた。しかしそうではない事例が増えている。私は他にも、フロンティア出身移民を研究している。異国で育ったが、彼らの民族的故郷である土地に帰る人々のことである。
グローバリゼーションの進行に伴い、あらゆる形で境界を横切る移民が増えている。予想外の現象の1つが、ますます多くの移民が新興経済市場に目を向け、先進国がそれらの移民を獲得し損ねるかもしれないということだ。