日本は“電気自動車革命”に取り残される? 「過去最大の挑戦」が状況を変えるか

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◆日本が遅れているという見方は表面的だという指摘も
 世耕弘成経済産業大臣は昨年9月、「電気自動車に向かう傾向は強まっている。しかし、ただちにEVに移行するのは難しい」とコメントしている(NYT)。この発言に代表されるように、日本がFCVを支持するのは、EVに完全移行する前の過渡期の技術として重視しているからだと言えよう。しかし、BISリサーチ社の市場調査によれば、世界の電気自動車市場は2026年までに1080万台にまで拡大する見込みだという。FCVを挟むことなく一気にEVに移行するという見方が世界の主流になってきているのだ。

 当然、日本メーカーもそれに気づいていないはずはない。トヨタとパナソニックは昨年12月、EV用のバッテリー開発の協業について検討を開始すると発表。世界最大手の自動車メーカーと、既にテスラのバッテリーサプライヤーとしてEV事業に参入しているパナソニックのタッグは、世界最強と言えよう。このニュースを伝えた米フォーブス誌は、EV勢に対する「日本の過去最大の挑戦だ」と評している。

 トヨタとホンダは、昨年秋の東京モーターショーで、EVの試作車の展示に最も力を入れた。トヨタはパナソニックと共同開発するバッテリーを搭載したEVを2020年代初頭までに10車種投入し、2030年までに年間100万台のEV販売を目指すとしている。また、トヨタとマツダ、デンソーがタッグを組み、EV戦略を進める動きもある。フォーブス誌は、こうした日本メーカーのEVへのシフトの動きと共に、当初から『リーフ』でEV勢に加わっている日産の存在や、現状でトヨタのラインナップの半数以上がプラグインハイブリッド車である点を指摘。日本がEVで遅れを取っているという見方は表面的なのではないかという見方を示している。

◆バッテリーのコスト減と原材料の安定供給が鍵
 世界の車がEVに取って代わるのはそう遠い未来の話ではなさそうだ。とはいえ、依然、いくつものハードルがあるのも事実だ。NYTは、EVが世界を席巻するために必要な条件をいくつか挙げている。

 最も重要だとしているのは、EVのパワートレイン(動力源)となるモーターと関連部品の製造コストを下げることだ。同紙は、現状EVのパワートレインの価格は1万6000ドルだが、従来車の6000ドル程度にまで下げる必要があるとしている。コスト減の鍵となるのは、バッテリーの価格だ。現在既にバッテリー価格は急落しており、バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチの分析によれば、2011年の半額以下になっているという。NYTはこれにより、EV普及のタイムテーブルが加速していると指摘している。

 リーズナブルな価格で十分な数のバッテリーを供給するためには、原材料の安定的な供給が不可欠だ。特にリチウム、コバルト、グラファイトといったレアメタル・レアアースは重要だが、例えばリチウムの場合、世界の産出量の4分の3が中国とチリに偏っている。NYTは、「需要が急増すれば、サウジアラビアが石油を使ってやっているように、中国は天然資源を外交の武器として利用するかもしれない」と、少数の産出国に頼る危険性を指摘する。また、コバルトは政情不安定なコンゴ民主共和国を主な産地としている。こうした現状から、リスク分散が急務となっており、チェコやカナダといった他国での鉱山の新開発・再開発の動きが伝えられている。

 日本はこうした世界の動きに遅れることなく自動車大国の地位を維持できるのか。予断を許さない状況だと言えそうだ。

Text by 内村 浩介

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