ツール・ド・フランス2021の事故とは?犯人女性のその後も解説

ツール・ド・フランス2021の事故とは?犯人女性のその後も解説

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「ツール・ド・フランス」とは、フランスで行われる世界的な長距離自転車レースである。観客はレースを道路脇で観戦でき、選手の間近で迫力あるレースを見られるのも魅力の一つだ。しかし、2021年開催のツール・ド・フランスでは、選手との近さが仇となり、大規模なクラッシュ事故が発生してしまった。

伝統ある大会で起きた、前代未聞の事故の原因はなんだったのか、そして事故を引き起こした犯人の女性はその後どうなったのかを解説する

ツール・ド・フランス2021の事故とは?

ツール・ド・フランス2021の事故とは?

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ツール・ド・フランス2021の事故とは、2021年6月26日に起きた大規模なクラッシュ事故である。事故によって多くの自転車同士が絡み合い、主催者側は怪我をした選手を治療するなど、対応に追われた。事故がツール・ド・フランス2021に与えた影響は甚大である。

この事故は大会史上でも最悪の事故だと言われ、センセーショナルな話題となった。とりわけインターネットやSNSなどで注目を集めたのは、事故の原因である。ここでは、ツール・ド・フランス2021の事故についてトピックごとに概要を紹介する。

ツール・ド・フランス2021の事故の原因

ツール・ド・フランス2021で起きた事故の原因は、観客だった一人の女性の行動である。女性は「おじいちゃん、おばあちゃん頑張れ」というメッセージを書いたプラカードを、大会の中継をしているテレビカメラに映そうとしていた。

そして、カメラに映ることばかり気にしていた女性が、ついにはプラカードを持ったまま選手たちが走る道に出たことにより、一人の選手との接触が発生した。女性との接触が原因で転倒してしまったのは、当時の自転車競技界で最高峰の選手だったドイツ人選手、トニー・マルティンである。

マルティンの後ろを走っていた選手たちも次々と転倒し、最終的に大規模なクラッシュ事故へと発展した。

ツール・ド・フランス2021の事故の影響

ツール・ド・フランス2021で起きた事故の影響は深刻だった。事故の影響によってレースは5分間中断され、クラッシュ事故に巻き込まれた8人の選手が医師の治療を受けることになったのだ。

特にスペインのマルク・ゾレル選手は、両腕を骨折する重傷を負っている。事故の影響で2人の選手が棄権し、その後も複数の選手が脱落する事態となった。

ツール・ド・フランス2021主催者側のコメント

事故の原因になった女性への非難がインターネットやSNSで盛んにされるなか、ツール・ド・フランス2021のディレクターだったクリスチャン・プリュドムは、同年10月にコメントを発表している。

クリスチャン・プリュドムは事故の原因となった女性のことを、「愚かなことはしたものの意図的に事故を引き起こしたテロリストではない」と擁護した。その上で、「大会を見に来るときはテレビに映るためではなく、選手を見に来たのだということを忘れないでほしい」と注意喚起したのだ。

ツール・ド・フランス2021犯人女性のその後

ツール・ド・フランス2021犯人女性のその後

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事故を起こした女性に関してさまざまな憶測が飛び交ったが、犯人として警察に出頭したのは、事故当時30歳だったフランス人女性である。事故の発生後、インターネットやSNSで女性に対する攻撃が過激化したこともあり、女性の名前など、個人の特定につながるような情報は今もなお伏せられている。

犯人女性については不正確な情報も多い。ここからは、信頼できる機関が報道した内容などをもとに、女性がその後どうなったのかを時系列順に解説する。

犯人の女性はその場から逃走した

ツール・ド・フランス2021で起きたクラッシュ事故の直後、女性はその場から逃走し、行方知れずになった。女性が持っていたプラカードがフランス語とドイツ語で書かれていたことから、彼女がフランス人かドイツ人なのではないかなど、さまざまな憶測が飛び交った。

犯人が逃走している最中も、選手にぶつかる直前の写真は拡散され、メディアにも報じられている。

事故を受け、当初ツール・ド・フランス2021の副ディレクターは、犯人を訴える意思を明確にしていた。フランスの警察当局も大会で起きた事故を、「事故ではなく意図的な傷害事件」と考え捜査に乗り出していた。

犯人の女性にSNSなどで大バッシングが起きた

ツール・ド・フランス2021の事故はインターネットやSNS上で大きな話題になり、女性への大バッシングが起きた。SNSで情報提供を求めた地元警察は、4,000件以上のメッセージが警察に寄せられ、中には「暴力の扇動すれすれ」の投稿もあったと発表している。

インターネットやSNSでのバッシングは、犯人女性に対する揶揄や中傷などを含みながら過激化していった。そうしたバッシングは女性を苦しめ、後に女性の弁護を担当した弁護士は、女性が地獄の苦しみを味わっていると語った。

犯人の女性が警察に出頭した

ツール・ド・フランス2021で起きた事故から4日後の2021年6月30日に、女性は警察に出頭し、事情聴取を受けた。警察当局によれば、女性は自分の行動の危険性を認識していたようで、自分の愚かさを恥じると供述した。

女性に対する刑がどの程度になるかは、さまざまな推測が飛び交い、日本円で15,000ユーロ(約200万円)の罰金と、禁錮1年が求刑されるのではとも言われていた。

犯人の女性が判決を受けた

最終的な判決として、犯人女性には1200ユーロ(約15万4,000円)の罰金と、国際自転車連合(CPA)に対する1ユーロの支払いが命じられた。

重い刑が課せられなかったのは、大会の主催者側が女性に対する法的措置を取り下げたことにもよる。はじめは強硬な対応を取ろうとしていた主催者側だが、女性へのバッシングの激しさから、法的措置を取らないことにしたのだ。

国際自転車連合は当初、「選手は身体的、道徳的、経済的にダメージを負っている」として厳しい姿勢を打ち出していた。だが、最終的には女性に対して重い賠償金を求めることはなかった。

国際自転車連合が女性に求めた1ユーロの賠償金は、多くの選手が負傷した事故の結果には決して見合わない。ただし、今後同じようなクラッシュ事故が起きないようにするための、象徴的な価値があると声明を出している。

スポーツ観戦では安全に注意を

ツール・ド・フランス2021の事故では、不注意な目立ちたがりの女性が事故を起こしてしまった。大会ディレクターの言葉通り、スポーツ観戦をするときは、あくまで選手たちを見に来たことを忘れないのが重要だ。目立ちたいのであれば、他の場所ですべきである。

また、ツール・ド・フランス2021の事故は、インターネットやSNSでのバッシングがいかに当事者を苦しめるかということを示す例でもある。そもそも過ちを起こさないよう注意するべきではあるが、個人に対するバッシングを過激化させないモラルも、周囲の人間には求められている。

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Text by NewSphere 編集部