政治利用されつつあるソウル群衆事故 繰り返される人災事故の背景

5日にソウルで開かれた「ろうそく集会」|Ahn Young-joon / AP Photo

 ソウルの繁華街・梨泰院(イテウォン)で起きた群衆事故から1週間が過ぎたものの、事故の影響は依然として韓国に暗い影を落としている。韓国は「安全軽視」による事故にたびたび見舞われ多くの犠牲者を出してきた。

 多くの修学旅行生が命を落とした2014年4月の旅客船セウォル号の沈没事故の悲しみと絶望を再び呼び起こしたかのような今回の事故に国民は悲しみとやり場のない怒りを抱えている。

 そして国民のそんな感情を扇動するかのように、ここに恐れていた事態も起こり始めている。

◆警察に集中する非難
 すでに日本でも事故の詳細が報じられ、地元自治体や警察の安全管理が不十分であったという認識が広まっている。実際に筆者の知人で事故現場の梨泰院近くに職場がある者や、まさに当日の数時間前に現場近くにいたという者の話を聞いても金曜日の時点でも多くの人であふれ返り、帰宅時の移動が困難であったことや、尋常でない人の流れに身の危険を感じてその場を後にしたことなどを口にしており、やはり何らかの予兆を多くの人が感じていたことがうかがえる。

 そして、事故現場やその近くにいた複数の人が警察に事故が起こる危険性や、警備や規制強化を訴えたにもかかわらず、警察が対応しなかったこと、結果的に現場に到着したのは事故発生後であったことが批判を大きくしている理由である。

Text by 原 美和子