ノンバイナリーとは|トランスジェンダーやXジェンダーとの違いも解説
セクシャリティは多様化し、社会問題としての関心も高まっている。性的マイノリティに関する言葉も多様化しているため、意味の違いを理解することが重要だろう。
本記事ではノンバイナリーを中心として、ジェンダーに関するさまざまな言葉の意味を解説する。多様化が認められる今、ノンバイナリーを理解するためにぜひ参考にしてほしい。
目次
ノンバイナリーとは
ノンバイナリーとは、性自認が男性や女性といった枠組みに当てはまらないとする考えの人を指す。「人間は男性もしくは女性である」といった性別二元論を超えた考え方である。
英語圏では「he」や「she」ではなく「they」を使って示される。
ノンバイナリーの恋愛対象
ノンバイナリーは性自認についての概念であるため、性的指向については考慮していない。つまり、ノンバイナリーの恋愛対象は人による。
自分のことを男性や女性に当てはまらないと認識しているのであれば、男性もしくは女性が好きな人も、どちらも恋愛対象となる人も、どちらも恋愛対象とならない人も、総じてノンバイナリーと言える。
ノンバイナリーに関する法制度
アメリカのカリフォルニア州では、2019年に自分の性別として男性女性以外にノンバイナリーを選択できることを定めた法律が施行された。出生証明書や運転免許証、身分証明書などで性別を記載する欄には、男性と女性以外にノンバイナリーと記載できる。
また2022年には、アメリカ全土でパスポートの性別を自分で選択できるようになった。男性と女性以外にX(男性でも女性でもない性別)の選択肢も追加されている。
一方、日本ではジェンダー観が硬直しており、ジェンダーギャップも改善できていないのが現状である。性別記入欄に男性と女性以外に「その他」や「選択しない」などの選択肢が追加されている場合もあるが、ノンバイナリーに関する法整備は進んでいない。
ノンバイナリーとジェンダーに関するほかの言葉との違い
LGBTQに限らず、性的マイノリティに関する言葉は数多く存在する。ジェンダーに関する言葉をよく耳にすると感じる人も多いのではないだろうか。
ここからは、ジェンダーに関する言葉を紹介し、ノンバイナリーとの違いについて解説する。
ノンバイナリーとトランスジェンダーの違い
トランスジェンダーは、LGBTQのTで表されている。身体的な性と性自認が一致していない状態を指す。中でも、自認している性に身体の性を適合するための手術を受けた人や手術を望んでいる人を、トランスセクシュアルと呼ぶ。
ノンバイナリーは自分の性を定義しないのに対して、トランスジェンダーは男性か女性のどちらかを認識していることが多い点が異なる。
ノンバイナリーとXジェンダーの違い
Xジェンダーは日本で生まれた言葉で、性自認が男性と女性のどちらにも当てはまらない状態を指す。
ノンバイナリーと似た意味で同じように使われることもあるが、細かく分類すると、Xジェンダーは性自認についてのみを表す言葉であるのに対し、ノンバイナリーは性表現としても同じ意味を持つ言葉となっている。性表現とは、他人に対して自分の性をどのようにふるまうのかを指す言葉である。
ノンバイナリーとアセクシャルの違い
アセクシャルは無性愛者とも呼ばれ、他の人に対して性的な欲求を抱かないセクシャリティのことを指す。性的指向についての言葉であり、性自認と性表現についての分類であるノンバイナリーとは意味が異なる。
アセクシャルに恋愛感情は関係なく、他の人に対して恋愛感情を抱かないセクシャリティはアロマンティックと呼ばれている。
ノンバイナリーとクィアの違い
クィアは、クエスチョニングとともにLGBTQのQで表されている言葉で、「風変わりな」「奇妙な」といった意味の「Queer」に由来する。すべての性的マイノリティを含んだ言葉のため、ノンバイナリーもクィアに含まれている。
もともとは性的マイノリティを侮蔑する言葉として使われていたが、性的マイノリティの人たちはあえてこの言葉を使って自分たちのセクシャリティを表現するようになり、現在はポジティブな意味で用いられることが多い。
ノンバイナリーとバイセクシャルの違い
バイセクシャルはLGBTQのBで表されている。日本では両性愛者とも呼ばれ、男性と女性のどちらにも性愛感情を抱くセクシャリティのことを指す。
バイセクシャルは性的指向についての言葉であるため、性自認と性表現についての分類であるノンバイナリーとは意味が異なる。
ノンバイナリーとパンセクシャルの違い
パンセクシャルは全性愛者とも呼ばれ、相手の性のあり方とは関係なく人を愛するセクシャリティを指す。性的指向に関する言葉のため、性自認と性表現についての分類であるノンバイナリーとは意味が異なる。
パンセクシャルに似た言葉として、複数のセクシャリティを好きになるセクシャリティのポリセクシャルがある。好きにならないセクシャリティがある場合は、パンセクシャルではなくポリセクシャルと分類される。
ノンバイナリーとクエスチョニングの違い
クエスチョニングは、クィアとともにLGBTQのQで表されている言葉である。性自認や性的指向を定めていない状態、もしくは定めたくない状態を指す。
ノンバイナリーと意味は似ているが、ノンバイナリーは性自認と性表現を表すのに対して、クエスチョニングは性自認と性的指向を表す言葉である点が異なる。
ノンバイナリーの有名人
ノンバイナリーを公表している有名人3名を紹介する。
- 宇多田ヒカル
- サム・スミス
- デミ・ロヴァート
宇多田ヒカル
名前 | 宇多田 ヒカル(本名:宇多田 光) |
生年月日 | 1983年1月19日 |
出身地 | アメリカ合衆国 ニューヨーク州ニューヨーク |
公式SNS | 宇多田ヒカルオフィシャルサイト Twitter:@utadahikaru Instagram:@kuma_power YouTubeチャンネル:Hikaru Utada Official YouTube Channel |
2021年6月、インスタライブで「MissやMrs、Msのどれを使えばいいか悩む」と語り、自身がノンバイナリーであることを告白した。日本ではこのことをきっかけにノンバイナリーという言葉が広まったとも言える。
宇多田ヒカルは2002年、19歳のときに映画監督の紀里谷和明と結婚したが、2007年に離婚。2014年にイタリア人の男性と結婚して第一子を出産後、再び離婚している。
サム・スミス
サム・スミスはイギリスのシンガーソングライター。2015年にはグラミー賞で最優秀新人賞を含む4部門を受賞している。
2014年にゲイであると告白し、2019年にはノンバイナリーであることを公表したサム・スミス。ノンバイナリーやクィアについて調べ、まさに自分のことだと感じたと語っている。
デミ・ロヴァート
デミ・ロヴァートは、歌手や俳優、アイドルなどとしてマルチに活躍するタレント。2021年、ノンバイナリーであることを公表している。
ポッドキャスト番組『4D with Demi Lovato』では、「ウィッグを被りたいと思うことや女性らしいドレスを着たいと思う日もあるかもしれないが、そこに性別的な意味はない。そのときに着たい服を選ぶ、それだけのこと」と語っている。
ノンバイナリーは性別二元論を超えたセクシャリティ
ノンバイナリーは、これまでの男性・女性という性別二元論に当てはまらない新しいセクシャリティである。性的マイノリティを表す言葉の種類は多いが、当事者にとっては自分を表す言葉があることが大きな救いになるかもしれない。言葉の違いを理解すると同時に、性のあり方や価値観の違いを理解できる人でありたいものだ。