結婚時に「再婚許可証」もらう妻も!? 意外な江戸時代の結婚・離婚事情
養蚕は、蚕が食べる桑を育ててから糸をつむぐまでの行程が多く、根気のいる仕事だ。それでも、働いただけ現金が自分の手に入ってくる充実感に、女性たちは惹かれた。大規模な養蚕農家にやとわれた女子奉公人の給金も悪くなかった。
のちに富岡製糸場ができる上野国(群馬県)では、養蚕による現金収入により女性の力が増したあまり、「かかあ天下」が名物になったほど。その勢いは当時の離縁状からも読み取れる。たとえば、妻からの離婚要求といえる「飛び出し離婚」。妻が、いまでいう慰謝料を自ら払うか、持参金を放棄しなければならないというシステムだ。妻に不利なようだが、現金収入のある女性は自分の意志で結婚を終わらせることができるため、むしろ魅力だった。「離婚後に養蚕奉公に出て後払いする」と約束してまで「飛び出し離婚」をした女性もいたという。なお上野国では、養蚕の技術から経営合理化までを解説したハウツー本『蚕養育手鑑』などを手引きに養蚕農家を切り回し、地主にまでなった女性もいた。
明治以降は、家父長制のもとで女性が財産権も発言力も失い、同時に離婚率も下がっていく。その意味では江戸時代の方が現代的だったといえるだろうか。
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