結婚時に「再婚許可証」もらう妻も!? 意外な江戸時代の結婚・離婚事情

東京都立中央図書館特別文庫室所蔵、歌川豊国(3世)『卯の花月』(部分)

◆夫が妻に渡す離縁状=再婚許可証
 江戸時代の離婚は、俗に「三行半(みくだりはん)」と呼ばれた離縁状を夫が妻に渡すことで成立する。文章が三行と半分なのでこの名があるのだが、規定はなく、三行でも四行でもよかった。

 文面はいくつかのパターンがあった。たとえば、「其方(そのほう)事、我等勝手に付この度離縁致し候」。「一身上の都合により離婚します」というテンプレート化した文面だ。これに、「しかる上は向後何方(いずかた)へ縁付き候とも差構えこれ無く候」と続く。「別れた妻が誰と再婚しても構いません」という意味。つまり再婚許可証として機能したのだ。このように、三行半には原則として、離婚するという事実と、妻の再婚の自由を認めるという趣旨を書くことになっていた。

 再婚が珍しくなかったこともあり、「其元(そこもと)望ニ付きいとま差遣候(さしつかわしそうろう)」のように、妻の希望を文言に入れた離縁状もある。また、「先渡し離縁状」といって、結婚する際に三行半を預かる妻もいた。預かった妻は、受取状を夫に渡す。これは、浮気や病死の心配など、結婚生活に不安があるケースに取り交わされた。

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Text by 伊藤 春奈