3人の日本人が受賞、ドイツの音楽賞「オープス・クラシック」授賞式に寄せて
「今年の器楽奏者」部門で受賞したリトアニアのアコーディオン奏者、そしてアイスランドのピアニストが弾くバッハの『ゴルトベルク変奏曲』と続き、「合唱録音」部門の古楽アンサンブル、そして「ベストセラー」部門を勝ち取ったドイツのポピュラーバイオリニスト、デイヴィッド・ギャレットを経て、『ホエアー・イズ・ホーム』で「クロスオーバー」部門の受賞を勝ち取った南アフリカ人のチェリスト、アベル・セラオコーがアフリカの民族衣装を着て登場した。土着のメロディを文字通り、腹の底から出る声で歌い、オーケストラも客席も一緒に歌わせて、一体化した会場にはアフリカの風が吹いた。
「独唱」女性部門にはスイス人ソプラノ、レグラ・ミューレマンが、スイスのチェンバー・アーティストCHAARTSと録音したCD『フェアリー・テイルズ』によって選ばれたが、舞台に上がったのはミューレマンだけで、ドボルザークのオペラ『ルサルカ』より『月に寄せる歌』をしっとり歌った。
最後は「生涯をかけた仕事への感謝」賞のヘルベルト・ブロムシュテットが紹介された。96歳でなお現役の指揮者だが、発熱のためドクターストップがかかり授賞式に参加できなかったという。ここ数年は座位で指揮するようになったが、その精力的な活動をたたえるために会場は自然に総立ちとなった。
ガーシュインのメドレーで締め括られたこのガラコンサートを生で聴けたのはやはり貴重な体験であり、それだけで価値のあるものだったというのが終演時に湧いてきた率直な感想だ。その様子は即テレビ放映され、ZDF局のホームページでは本国内とドイツ語圏のオーストリア、スイスで来年1月6日まで視聴することができる。
◆オープス・クラシック賞を取材して
音楽賞は政治的動向とは切り離せず、経済基盤の下に成り立っているのは明らかだ。それらを理解し、問題点は議論し、改善すべきではある。しかしそのうえで、やはり純粋に音楽を楽しみ、匠の技を愛でたい。そして西洋文化であるクラシック音楽の中心地で複数の日本人が評価され、活躍している様子を見ると、単純に勇気づけられる。こんな、世界中が紛争にあふれている時代だからこそ、そんな慰めが必要なのではないだろうか。
在外ジャーナリスト協会会員・中東生取材
※本記事は在外ジャーナリスト協会の協力により作成しています。