日本の皇室とは大違い 国王に受け継がれる英王室の莫大な富

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◆不動産ビジネス盛況 安泰の英王室
 個人資産だけではなく、女王に帰属する資産も後継者に譲られる。343億ドル(約4.9兆円)の資産価値があるとされる、クラウン・エステートと呼ばれる王室の土地や所有物も新国王に帰属することになった。こちらは信託財産として保有されるが、私有財産とはみなされないため、王は資産を売却することはできない。クラウン・エステートは資産と不動産を所有している巨大な管理会社とも言え、王室はここからの経済的利益を享受している。王室メンバーではない独立した組織によって運営され、余剰収益は毎年財務省に支払われる。(CBSニュース

 クラウン・エステートとは別に管理されている、ランカスター公領も国王の私有不動産とされ、新国王が受け継ぐ。公領からの収入の一定額が、王の私的収入となる。フォーチュン誌によれば、2022年3月時点でランカスター公領は6億5280万ドル(930億円)の資産を持ち、2400万ドル(約34億円)の純剰余金を出している。

◆経済効果抜群 王政廃止はもったいない
 王室には国から給料も支払われている。これはソブリン・グラントと呼ばれる王室助成金で、クラウン・エステートからの利益の25%が王族に支払われ、2022-2023年度は8630万ポンド(約140億円)となっている(i紙)。公式な外遊、資産の維持管理、女王の住居であるバッキンガム宮殿の運営・維持費に充てられてきた。

 これまでたびたび王室存続の是非が話題となってきたが、コンサルティング会社ブランド・ファイナンスは、2017年時点の英王室のイギリス経済への貢献は17億6600万ポンド(約2900億円)と発表。王室が観光業をはじめとするさまざまな産業に間接的な効果をもたらしており、国民一人あたりのコストは年間わずか4.5ポンド(約750円)で費用対効果が非常に高いとしている。広告塔としての役割は外せないという見方だ。

 ちなみに日本の宮廷費(公的活動に必要な経費、皇室財産の管理に必要な経費、施設整備に必要な経費など)は令和4年度で67億2477万円。天皇、皇后、皇太子ご一家に支給される内廷費と宮家に出される皇族費もそれぞれ3億2400万円、2億6017億円と英王室に比べ慎ましい。(宮内庁

 資産も戦後連合軍総司令部(GHQ)による事実上の財産没収で、天皇家に残った金融資産は当時1500万円ほどだったという。現在は、法律により皇族は一部を除き私有財産を持たなくなった。読売新聞によれば、皇室の国への貢献度を経済価値に換算した推計はないということだが、一度調べてもらいたいものだ。

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Text by 山川 真智子